国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年を振り返る

2021年はコロナ後のニューノーマルが見えてきた年であった。 オリンピックの開催を1年延期したのと同様に展示会も延期されたものが次々と開催された。鳥獣戯画展を初め、三菱150年の至宝展、京の国宝と大型企画展がスライドして開かれた。中でも京の国…

【名画の殿堂 藤田美】両部大経感得図 藤原宗弘筆

今年の最後に見た国宝は両部大経感得図であった。奈良博の名画の殿堂展でも最後に飾られていたので締めるのにふさわしい作品である。 2メートル四方の襖絵となっているが、もともとは廃寺となった内山永久寺の須弥壇の建具で、曼荼羅の裏側に描かれていた。…

【名画の殿堂 藤田美】玄奘三蔵絵 巻第四 高階隆兼筆 

藤田美術館は2022年春にリニューアルを終えて展示を再開する。この間、兄弟的な施設で隣接する太閤園が売却され、ホテルとしての運用を終えるなど周辺の雰囲気が変わってしまった。一番変わったのがもちろん藤田美術館自体である。以前は古びた建物に蔵内展…

浄土堂 浄土寺

浄土寺の国宝は阿弥陀三尊像を安置している浄土堂も指定を受けている。阿弥陀三尊像が巨大なため動かすことは不可能に近いので堂自体を付けたしで国宝にしてもよさそうだが、別々で指定を受けている。 お堂は阿弥陀仏の光背まで計算して建てられているので、…

木造阿弥陀如来及び両脇侍立像 浄土寺

しばらく国宝を観に行けていなかったので、久しく行っていない浄土寺へ行く。奈良博で2017年に開催した快慶展以前に訪れているので、4年以上前に行ったっきりであった。 浄土寺へは直行するバスがコミュニティーバスのみで、そもそも直行バスの本数が少なく…

【東博150年】法隆寺献物帳

法隆寺から皇室へ献納された品々を保存するという事業は戦後に皇室から国へ移管されたことから東博で行うようになった。一般公開は1964年からで、1999年の現在ある建物(2代目)ができて大々的に公開されるようになった。 法隆寺から皇室に献上された品は30…

【東博150年】木画経箱

菱形に組んでデザインされたシンプルな箱。源流は古代エジプトやペルシアのモザイク技法で、シルクロードを通って隋・唐時代に発達した。東の端の日本にたどり着いた技法としてだけでなく、表面全体に菱形と三角形に切った沈香の薄板を貼り詰め、その合わせ…

【東博150年】海磯鏡

単独で国宝指定を受けている鏡は香取神社の海獣葡萄鏡と大山祇神社の禽獣葡萄鏡、そして法隆寺献納物である海磯鏡の3件である。 今は携帯電話など日常品でも鏡面加工がされて、鏡の代わりになるものが沢山ある。しかし、古代の鏡は超貴重品で、庶民が持つこ…

【東博150年】墨台, 水滴, 匙

銅板に金メッキした金銅製の文房具たち。当時、文具はハイテクツールだったので誰もが持てるものではなかった。文房四宝と呼ばれ、教養を満たす道具として重宝されていた。記録によると日本には610年に朝鮮半島から招来した。仏教に積極的な聖徳太子が三経義…

【東博150年】竹厨子

奈良時代には箱型のものを厨子と呼んでいた。現在ならば仏像などを安置するいれもののことを指す。 竹厨子は聖徳太子の遺品として法隆寺に伝わってきた。竹細工の箱と言われると思い浮かぶのが民芸品だが、素朴な形状を除いては一級品の技術によって作られて…

【東博150年】聖徳太子絵伝 秦致貞筆

釈迦の一生を描いた絵因果経は3件が国宝指定を受けている。巻物状で作られ、各地で説法するために利用されていた。聖徳太子絵伝も太子の一生を絵解きするためのもので、こちらは板状のものに描かれており、障子絵だったものを屏風絵に改装。大広間で多くの…

【東博150年】細字法華経

法隆寺は言わずと知れたお寺である。寺で大事なものの一つは経典である。これが信仰の指針となるものなので、なくては寺はなりたたない。信仰の柱となる経典は火災などで失いやすいので、写経生などを使って大量に書き写して複製する。その見本となる経典と…

【東博150年】七弦琴

来年の国宝関連の展示会で一番楽しみなのは東京国立博物館150周年記念展示会である。なにせ、国内では最多の国宝保有数を誇る東博が、出し惜しみなくすべての所有国宝をこの時期に展示すると発表したためだ。そこで、2022年秋に向けて東博所有の国宝をひとつ…

源氏物語絵巻 徳川美術館

国宝の源氏物語絵巻が巻物となって蘇った。徳川美術館所蔵の国宝・源氏物語絵巻は断簡されて木枠にはめられて保管されていた。当時の保管方法としてはベストな方法だったかもしれないが、時代を経て傷みが目立つようになったことから修繕することとなり、そ…

【きのくにの名品】古神宝類 熊野速玉大社

きのくにの名品で絢爛豪華な展示物は熊野速玉大社の古神宝類である。一括で国宝指定を受けているため、単品や数点での展示はよく見かけるが、これだけの点数を一度に展示することはあまりない。織物や工芸品、箱や扇、鏡などがあり、そのどれもが丁寧に作ら…

【きのくにの名品】人物画象鏡 隅田八幡神社

きのくにの名品展は出展されている点数が多いため、普段は常設展示をしているコーナーにも展示が波及していた。時系列に並べられた展示は荘園などの年貢の文書や田畑を検地した地図など、貴族や寺社が領地化すた証明ための中世の資料が展示してあった。 その…

【きのくにの名品】銀銅蛭巻太刀拵 丹生都比売神社

和歌山県は江戸時代は紀州藩で徳川家が直接支配していた。水戸・尾張と並ぶ御三家で、暴れん坊将軍でお馴染み、徳川吉宗を輩出した。県立博物館の前には馬に乗った銅像があり、テレビドラマのオープニングさながらの躍動感ある像に仕上がっている。 名品展で…

【きのくにの名品】熊野速玉大神坐像・夫須美大神坐像・国常立命坐像・家津御子大神坐像 熊野速玉大社

和歌山では文化祭りが絶賛開催されている。その催し物に合わせて、和歌山県立博物館できのくの名品展が企画されていたので、見に行った。 紀州は全国6位の国宝保有県である。県内に高野山があることが大きい。しかし、霊宝館100周年記念で大半の国宝が登場…

千手観音像 道成寺

妙満寺から期間限定で道成寺へ里帰りを果たした鐘 道成寺は歌舞伎などの演目でお馴染みの寺。嫉妬にかられた清姫が安珍を道明寺へ追い詰めた。男が身を隠すために鐘の中に身を潜めた。鐘の中に男がいると気づいた姫が龍になって蒸し焼きにしたとの伝説が有名…

清水寺 本堂

国宝建築物で集客力ランキングトップ2は東大寺大仏殿と清水寺本堂だろう。なにせ建物の大きさはトップクラスで、古都を代表するにふさわしい風格がある。さらに、修学旅行の定番となっていることから、集めずして集まる仕組みになっている。むしろ、ここ数…

尺牘 大慧宗杲筆 畠山記念館

畠山の名品展に出ている後期の国宝は2点。見たかった牧谿作を堪能して、1階・一番奥の部屋に大慧宗杲筆の墨蹟が展示していた。 大慧宗杲は中国・宋時代の臨済宗の僧侶。師から示された公案を解いて悟りに到るという看話禅を推奨した。黙々と坐す座禅により…

東博150周年

2022年、東京国立博物館は創立150周年となる。それを記念したイベントを年度内通じて行うと発表があった。中でも10月18日~12月11日まで開催予定の「国宝 東京国立博物館のすべて」では同館所有の国宝89件がすべて(展示替えあり)展示さ…

煙寺晩鐘図 伝牧谿筆 畠山記念館

11月に入り、楽しみにしていた京博で開催中・畠山記念館の後期に突入。早速、見に行く。 例年だと10月いっぱいぐらい夏日が続くのだが、急に寒くなり数年ぶりの長い秋を楽しめている。京博も秋モードへ衣替え。考える人も紅葉と明治古都館のレンガ色が背…

興福寺 五重塔

薬師寺東塔の改修工事が終わったのがついこの前だったが、今度は興福寺五重塔が改修工事に入る。その前に秋と来春に内部公開を実施するので見に行くことにした。 五重塔自体は外側から何度となく見ていたが、内部に入るのは初めて。心柱を中心に四方に三尊形…

金剛輪寺 本堂

山腹に建てられたお寺。入り口から軽い山登りをしないと本堂にはたどり着かない。山城的な要素があるため、山門と本堂の距離があまりないため、写真のようなアングルになってしまった。 本堂までの道中、道の端々に地蔵が建てられていた。風車を持った地蔵は…

西明寺 三重塔

西明寺のある場所は琵琶湖の北東。琵琶湖を中心とすると比叡山と対角線上にある。すぐそばには鈴鹿山脈があり、近江と濃尾地域と接する境目にあたる。地政学的に見るととても重要な位置となる。北陸や美濃・尾張から京へ進行する時には一番最初の入り口とな…

西明寺 本堂

天台宗は最澄の遠忌1200年記念で盛り上がるなか、昨年の湖南三山の制覇に続いて、今年は湖東三山制覇を実施した。 そもそも湖東の天台宗派の寺院を集めて湖東五山として古くから信仰を集めていた。廃寺などで三山となり、人気にあやかった形で湖南三山が16…

金銅獅子唐草文鉢 護国之寺

護国之寺の金銅獅子唐草文鉢はテーマが合えば岐阜市歴史博物館で展示されることがある。今回、美濃の僧・栄叡と鑑真和上に関係する品々を集めた展示会ということで、お鉢が回って来た。 凝然国師の遠忌700年を記念して京博で行われた鑑真和上展では鑑真の教…

銅像釈迦如来倚像 深大寺

東博での最澄と天台宗のすべて展の最後コーナーにしてインパクトが最もあったは深大寺の彫像である。 国宝の釈迦如来倚像は以前、現地まで見に行った。東京都内とは言いつつも郊外にある寺院で電車の駅前とは遠く離れていることから再開発とは無縁ののんびり…

離洛帖 藤原佐理筆 畠山記念館

畠山記念館の名品、前期ラストの作品は藤原佐理の離洛帖であった。 藤原佐理は草書の名人として平安の三蹟に数えられる。その佐理が都(京)から大宰府へ赴任する途中で書いた手紙が離洛帖である。京(洛)から離れた際に摂政・藤原道隆に赴任の挨拶を怠った…

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。