2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧
日中の書の名品と題された企画展だが、すでに中国では失われてしまい日本に伝来した古写経によってのみ知ることが出来るものがある。知恩院の菩薩処胎経はすでに大陸では失われた経典で、奥書に西魏大統16年(550年)と記されていることから、伝来してきた裏…
墨書は紙に書かれるため、保管方法によってはぼろぼろになる可能性がある。崩れいく紙に対しては裏打ちなどして補修することで文化財として保管に耐えうるようにする。本能寺切はかなり傷みが激しいが補修でなんとか耐えていた。虫食い状態の文字もあるが判…
日中書の名品と題して京博で開催している企画展ではあるが、中国文化を受けた写本や拓本が多く出品されている。そしてようやく日本オリジナルの内容が登場した。 日本書紀は古事記と並び、奈良時代に編纂された日本神話や古代の歴史を伝えている歴史書である…
新撰類林抄は詩人の作をテーマごとに分けた詩集である。三筆の一人、空海が書いたとして箔をつけることがあるが新撰類林抄巻もその部類で、空海の筆さばきとは違う。とはいえ、平安時代初期に写されたもので、筆跡はすべて唐様の草書体で書かれている。収録…
奈良時代に藤原家との戦った側の痕跡は経典に残っている。 太平寺に残る大般若経は、和銅5(712)年の記載がある経典である。この経典は長屋王(壬申の乱の勝者である天武天皇の長男・高市皇子の子)が発願した。文武天皇(天武天皇が父、息子が聖武天皇)…
古都・奈良の文化財がユネスコ世界遺産に登録されて25周年を記念した特別拝観券の発売を22日から開始した。 奈良市内の六社寺を回れる共通拝観券で、そのメンバーがすごい。 東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺と宗派の違う大寺院たち…
京都国立博物館の道路を挟んだ向かい側にある蓮華王院(三十三間堂)には先月行ったばかり。千体ものある千手観音だが平安時代当時のオリジナルは124体しか残っておらず、鎌倉時代に入って追加されたものが大半だそうだ。 日中書の名品で出ていた千手千眼…
京都国立博物館は平成館1館での運用が続いている関係で、常設展示や企画展示が特別展のない期間にしか開くことができない。東博や九博のように別にスペースがあったり、奈良博の仏像館のように特別展に関係なく展示できるスペースがほしい。 夏真っ盛りの8…
リニューアル工事を進めていた三の丸尚蔵館の一部開館が11月3日に決まった。全面開館は3年後の令和8年を予定しているので、巡回展はそれまで続けばと思う。 さて、今夏の三の丸尚蔵館所蔵の巡回先は岡山。岡山県立美術館の全館を使っての展示会だったが…
京都文化博物館で〜室町幕府滅亡後450年〜足利将軍、戦国を駆ける!と題した企画展が開催されていたので見に行った。 室町幕府の滅亡と言われてもピンとこないのは、その後に活躍した織田信長や羽柴秀吉、そして話題の徳川家康の印象が強すぎるためと、徳川…
三十三間堂から智積院へ行った。となると京都国立博物館に寄らない手はない。とはいうものの、プチ京の国宝まつりとなっている「日中 書の名品」は8月8日からの開催だったので、国宝の展示は少な目。 そんな中、地獄・鬼・天狗の名品ギャラリーで病草紙が…
2023年4月4日、新しく智積院に宝物館が誕生した。これまでも寺宝を公開する蔵?はあったものの、温度・湿度管理が行き届いたものではなく、文化財保護の観点から現代的な保管機能を有した器を準備することが急務だった。 新しく出来た宝物館では開館を記念し…
蓮華王院こと三十三間堂は見どころが多いため、ついご本尊の存在を忘れがちである。 本尊は千手観音坐像で、千手観音でかつ坐像の国宝は葛井寺の本尊と三十三間堂の2体だけである。葛井寺の観音様は大きさ的には150cmに満たない(座っているため)が、三…
鎌倉仏師の代表である慶派作品は興福寺や東大寺など南都仏教界に多く残っているイメージがある。力強い作風で平安から鎌倉、貴族社から武家政権へ変わるシンブル的な位置づけと捉えていた。三十三間堂にも力強い慶派作品がある。二十八部衆は筋肉の躍動感が…
唯一無二の言葉がふさわしいのが千体千手観音立像だ。人の大きさぐらいの千手観音立像がずらりと約千体(寄託されているものが一部あるよう)並ぶ。一体でも地方の寺なら本尊クラスとなるところ、千体となると圧巻としか言いようがない。本堂の構造はこの千…
蓮華王院(三十三間堂)の風神と雷神は国宝彫刻物で同じ指定内にも関わらずかなり離れた地位で鎮座している。二十八部衆や千体千手観音立像を護るようにお堂の端と端に置かれているためだ。入り口近くに風神、最も遠い折り返しの場所に雷神がある。豪華な千…