中国絵画
神戸市立博物館で開催している「よみあげる川崎美術館」の後半に行ってきた。 川崎美術館は明治から戦前にかけて形成された川崎財閥の創業者・川崎正蔵が手掛けた招待者のみが見ることが出来た施設だ。ただ、昭和恐慌のあおりを受けて美術品は散逸してしまっ…
今年の秋は例年に比べて早く訪れている。残暑があっさりと終わり、観光には快適な良い天気が続いている。京都にも観光客が戻りつつあり、本格的な紅葉シーズンにはコロナ前の賑わいに戻りそうだ。 さて、文化の日を挟んだ週は、博物館や美術館でいろいろなイ…
静嘉堂@丸の内の第2室は入り口からは対面となる。こちらは大陸から渡ってきた品々を展示。前期に訪れたので宋~元時代のものが中心だった。伝馬遠筆の風雨山水図や伝 夏珪筆の山水図が並ぶ中、伝牧谿の羅漢図がお気に入り。牧谿特有の薄墨を用いた背景は長…
泉屋博古館東京で開催されている「古美術逍遥 東洋へのまなざし」展は住友家が集めた名品が揃っている。リニューアルを記念して出版した泉屋博古館名品選99に掲載された半数近くのコレクションが展示されている。 第一室は中国の明から清時代の中国画、第二…
中国の水墨で描いた山水画は静寂の中にあって、その風景に吸い込まれる。瀟湘臥遊図巻も宋代の傑作で乾隆帝コレクション中の四名巻の一つとして珍重された。なので、名のある北宋末に活躍した文人画家の李公麟の作品と考えられてきたが、同郷の李という画家…
因陀羅筆の寒山拾得図は断簡された絵画がそれぞれ国宝指定となっている。5つが指定を受けているが、その一つが東博所有。5つつすべてが一度に同じ場所で公開される時が来るのか。曜変天目茶碗3つ同時に同じ場所公開よりも可能性はあるが、果たしてどんな企…
紅白芙蓉図は宮廷画家(画院画家)であった李迪が描いた。花や鳥や動物を描くことを得意とした画家で、忠実に写実している。若冲の動植綵絵のような本物より本物らしい絵画ではないが、美しい瞬間を切り取り永遠に残した作品だ。それを茶室に合うように日本…
足利家は日明貿易を軸に莫大な富を築き上げた。その貿易では大陸からもたらされた文化財も多く輸入された。その中で特に良いものは将軍の御愛用となり、東山御物と呼ばれる一群を形成する。その東山御物となったなかに、梁楷筆の出山釈迦図・雪景山水図があ…
11月に入り、楽しみにしていた京博で開催中・畠山記念館の後期に突入。早速、見に行く。 例年だと10月いっぱいぐらい夏日が続くのだが、急に寒くなり数年ぶりの長い秋を楽しめている。京博も秋モードへ衣替え。考える人も紅葉と明治古都館のレンガ色が背…
畠山記念館の名品展はこれまで見た中でも指折りの”実用”している品々を展示している。実用といってもお茶会に使用してするために集められたという意味で、美術品として飾りものになっていないという意味での”生々しさ”が伝わってくる展示会である。 白金の記…
関西では馴染みの薄い畠山記念館。京博では畠山記念館の名品と題して展示会が開催されている。記念館はポンプや環境関連の機械を扱っている荏原製作所の創業者である畠山一清が集めた品々を展示している施設で、茶道具の名品が集まっていることで知られてい…
三菱1号館美術館は赤煉瓦の重厚な作りである。室内にはマントルピースが各部屋にあり、それぞれが意匠を凝らして室内演出に貢献している。あくまでも実用的な建物であるため、展示施設として作られた建物ではありえないぐらい豪華な部屋になっている。 この…
2020年はオリンピックイヤーであったことから、東京の多くの美術館で国宝の展示が企画されていた。しかし、コロナでオリンピックが延期されたことで三菱財閥の至宝たちの展示は来年に持ち越し、一方で三井財閥は開館15周年として記念美術館で今夏に開…
大和文華館が誇る名品は日本の物ばかりではない。李迪筆の雪中帰牧図は水墨画の名作で、画面から冬の凍てついた寒さと牛の歩みの遅さにも関わらず、牛飼いからは家に帰るという気楽さが伝わってくる。所有者は足利義尚から後藤祐乗へ下賜され、井伊家、益田…
断簡界のスーパースター。因陀羅筆の禅機図は分割され、その5つがバラバラに国宝指定されている。古筆の手鑑のように断簡を収集して、集めたその中身が素晴らしいので国宝になったものや、断簡にはなったもののそれ単独でも価値のあるものが指定を受けるこ…
南宋の宮廷画家、馬遠は水墨による花鳥や山水を写実的に描く。南宋四大家の一人に数えられる。本作は馬遠の真筆ではない可能性があるが、素晴らしい作品であることは間違いない。室町期の日本水墨画界が大いに発展につながる作品である。 レア ★☆☆観たい ★☆☆…
李迪は南宋時代の宮廷画家。戦争にはからっきしだった南宋は文化の面では花開き、宮廷画家も腕を振るには絶好の時代だった。同作品は西洋の静物画に引けを取らない素晴らしい出来。酔芙蓉は一日の間で紅から白へ変化する。それを写実的に描かれており、現物…
ゆったりとした時間が流れる中国大陸の雰囲気そのままに描かれた水墨画。国土の狭い日本にはない広々とした風景を狭い紙面にどう描くかが腕の見せ所。すべてを描かないで描いた部分から想像させるテクニックが秀逸である。 日本水墨画界の巨匠である雪舟は中…
広島県では二つの400年にまつわる展示会が開催されている。県西部の安芸の国では福島正則改易後、浅野家が入城してちょうど400年目にあたる展示会を開催している。 浅野家といえば赤穂の匠頭が知名度に勝るが、そちらは別家で宗家は安芸広島藩城主である。豊…
日本には四季があった。最近は暑い夏の後、すぐに冬が来て、ゲリラ豪雨の梅雨が明けると夏が来る三季になりつつある。せめて絵の中だけでも四季を感じたい。それを留めたのが金地院所有の秋景・冬景山水図だ。 夏は久遠寺が所有し、春は失われた。3幅すべて…
今回の京博の企画展では、雪舟作品は展示されていない。日本の水墨画の大巨匠で、前回の国宝展前期には「国宝6点すべてみせます」と大々的にPRに使われていた。しかし、雪舟の画風は亜流に見える。極端な強調表現と軽やかな筆使いの部分を使い分け、コン…
1階入り口から一番遠い奥の小部屋で渡来図を展示している。 渡来品の質が最高潮に達したのは室町時代。九博の室町将軍展でも渡来品を日本風にアレンジして鑑賞していたことが分かる展示があった。日明貿易の天龍寺船で得たものを愛でる。東山文化の誕生であ…
国宝展は複数品指定のものが1点だけもしくは会期を分けて出品されているケースが多い。スペースが限られているためだ。また、肖像画の伝源頼朝などのように1面を占拠して、すべての指定品を一度に見せる方法もある。 ところが、2面を使って一度に全部見せ…
鶉は愛玩動物として古事記にも登場していたぐらい昔から飼われていた。また、鳴き声もよく、江戸時代には武士の間で鳴き声を競う「鶉合わせ」なるものが開催された。 そんな馴染み深い鶉だが、中国でもおなじように人気があり、それを題材にしたのが同図であ…
南宋画の傑作にして東山御物のひとつ。徽宗皇帝筆とされる夏秋冬、国宝三幅の山水画が勢ぞろい。その中で夏景は老師が大きな松を揺らす風景が描かれている。構図の中では老師は小さい。だが、見た瞬間に空間に吸い込まれ、雪村の呂洞寶図ぐらい、大きく描か…
雪舟の国宝6点勢ぞろいで賑わう国宝展だが、南宋の本家の絵には圧倒される。Ⅰ期出展作品も素晴らしかったが、水墨画と言えば険しい山と自然という定番のパターン図柄。その最高峰は観る者の足を必ず止めてしまう。 高桐院の山水図は遠近法の概念がなかった時…
価値観が時として美術品を破壊・再生させたがる。茶器ではわざと割って金で接合することで、その部分が味となって評価が高くなることがある。 絵画でも裁断されることがある。茶の湯を楽しむために建てられた茶室が小さいためだ。それまで大きな寺院のために…
切り立つ山々、写実的な花々など中国画の傑作の中にあって、ポツリと佇んでいるのが宮女図。 ほんとうに2階のトリを飾る作品でよいのか。どこにでもいそうな宮廷の女性が一人だけ書かれていて、派手さに欠けるシンプルな構図。これまで2階で見てきた色あざ…
寒山と拾得は伝説の人物の名前で、禅にかかわる逸話を掛け合い形式で表現している。そのため、1場面ごとでも理解しやすく、床の間サイズにカットされた。 レア ★☆☆ 観たい ★☆☆ コラボ ★★☆ 禅機図 期間 Ⅱ 寒山拾得図 - e国宝
禅機図は5つに裁断されて、それぞれが国宝に指定されている逸品。その3点が出品される。残りは根津美術館と畠山美術館が所蔵している。数ある美術品を1件と数えることは多いが、もともと同じものが5件として国宝に認定される例は珍しい。それ程、貴重な…