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【名画の殿堂 藤田美】玄奘三蔵絵 巻第四 高階隆兼筆 

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藤田美術館は2022年春にリニューアルを終えて展示を再開する。この間、兄弟的な施設で隣接する太閤園が売却され、ホテルとしての運用を終えるなど周辺の雰囲気が変わってしまった。一番変わったのがもちろん藤田美術館自体である。以前は古びた建物に蔵内展示とレトロな美術館だったが、前を通った感じではガラス張りのおしゃれな建物に変身していた。所有する美術品を売却して得た資金で最新の設備となった美術館を早く見たい。

その前の露払いではないが、奈良国立博物館藤田美術館が所有する名画のみを借り受けた展示会が開催されていた。同館と言えば曜変天目茶碗が頭に浮かび、それを目当てに訪れることが多いので名画のイメージは薄い。しかし、国宝2点を有するだけでなく、明治期の画家の傑作も保有しているようで、改めての展示会となった。

出迎えてくれたのはメインビジュアルにもなっている竹内栖鳳の大獅子図。もともと大きな作品だが、見ていると実物より大きく見えてる迫力を感じる。毛並み一本一本が丁寧に書かれており、巨大な絵でも手を抜かずに精密に描き切っている。印象派の絵とは真逆の仕上がりにため息しかでない。ただ、名画展の出品作は圧倒的に日本画と中国画で、洋画はこの作品のみだった。

国宝指定を受けている玄奘三蔵絵は次の部屋に展示していた。玄奘の一生を記した内容を高階隆兼が描いたものである。シルクロードから渡来する品々が増えたと同時に、玄奘が仏教の原点を求めて旅して物語も伝わって来た。それを誰もが分かりやすく伝えるための道具として鎌倉時代に視覚化された絵巻物である。

作者の高階隆兼は御所の絵所に所属する絵師で、筆とされるものに春日権現験記絵、石山寺縁起絵巻などがある。官製作品ということは依頼があって作り上げたものとなり、武士の世の中になっていた鎌倉時代に、過去の歴史を描くことで公家の正当性を主張する役目を負っていた。歴史を語り継ぐためには誰もが分かる高い芸術性が必要なのだろう。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。