国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

2021年を振り返る

2021年はコロナ後のニューノーマルが見えてきた年であった。

オリンピックの開催を1年延期したのと同様に展示会も延期されたものが次々と開催された。鳥獣戯画展を初め、三菱150年の至宝展、京の国宝と大型企画展がスライドして開かれた。中でも京の国宝展は京都市京セラ美術館のリニューアルオープンを記念した展示会であったが、延期に伴い場所を京都国立博物館へ移しての開催となった。そのため、当初予定していた国宝の展示数から京博独自で集めたものを加えて、大幅に増加しての国宝の展示となった。災い転じて福となすとはなった。

さて、2021年の国宝トピックスとしては周年・遠忌が重なった年である。平安仏教の2大教団、真言宗天台宗それぞれで展示会があった。前者の真言宗高野山にある霊宝館が建って100年を迎えた記念展示会。4期に分けて、高野山にある寺宝たちを惜しげもなく公開した。なかでも、運慶作の八大童子はミラーボールの演出もありワクワクする展示となっていた(なぜか後期はなくなっていたが…)。天台宗伝教大師遠忌1200年記念展で、東京、九州、京都と巡回する展示。今年だけでいうと東京が無事閉幕したが、2022年に九州と京都で開催する。天台宗関連の寺院から集まったお宝に加えて、地域性を加味したものを各地で展示するため、各地でしか見ることができない内容も含まれている。東京展には智証大師坐像(御骨大師)が展示されていたが、思いのほか人気がなく、じっくり見ることができた。遠忌ではもう一人、国内仏教の最初の布教者である聖徳太子1400年展も開催された。こちらは法隆寺系(奈良博と東博)と四天王寺系(大阪市立美術館サントリー美術館)での開催で、どちらも縁のある品々が展示されていた。なかでも法隆寺系は秘仏聖徳太子像が至近距離で見ることができ、それだけで満足のいく展示出会った。四天王寺系も国宝の剣が西で丙子椒林剣、東で七支刀が1つずつの展示となっている。刀剣ブームではあるが、刀剣女子たちが対象としている時代以前に作られた剣なので、混雑の心配はない。

周年の展示会で目を引いたのが、三菱150年の至宝展。三菱財閥系の3館(静嘉堂文庫、東洋文庫、三菱1号館美術館)が所有する名品を集めただけの展示会。三菱が集めた中には国宝が12件もあり、重文クラスも多数ある。その中から選りすぐられたもののみが展示されていた。中国から招来した国宝の書たち(重文もあったが)に囲まれる部屋は圧巻で1年遅れとはいえ、よく開催してくれた。

最近よくある形式では展示館がリニューアル工事中のため、違う場所での特別企画展を開催するものである。数年前に藤田美術館の所蔵品を奈良博で展示(12月にも一部展示)していた。この形式で東京・白金台にある畠山記念館の所蔵品が京博で公開。関西では同館所蔵品を一堂に展示するのは初めての試みだった。茶道具を中心とした展示ではあったが、その関連で床の間に飾る煙寺晩鐘図などがあり、茶会で使われている様子が思い浮かぶ展示となった。あと、能の衣装を展示しているショーケースの背景を能舞台風に木目にアレンジしていたのはオシャレな演出だった。また、雪舟と玉堂展のような地域縛りや、奈良博三昧のように保有美術品をフルに生かした展示会など、アイデアで乗り切る展示会も増え、楽しめる内容が多かった。

新型コロナウイルスが発生するなど海外からの入国が難しい現状において、美術館も海外作品を借り受けことが当然難しくなっている。展示会の企画自体は数年かけて行われているので、企画の打ち合わせ自体が難しくなっている現状においては来年度あたりからコロナ以降の新規企画が反映され始める。その意味で複数の海外美術館からの借り受けて企画された特別展は至難の業となりそうだ。その意味では数年間は国内にあるお宝を展示するものが増えるのは間違いない。その筆頭が東博150年を記念した東博国宝展だろう。この展示会は改めて言うまでもなく一押し。来年の秋が今から楽しみである。コロナの平穏化(終息はとうぶん無理だろう)を望むばかりだ。

最後に今年7月、三の丸尚蔵館所蔵品が国宝の指定を初めて受けた。指定基準が変わったためだが、これにより大量の国宝・重文が誕生してもおかしくない。(外国人にも分かりやすくするため)よいものを良いと指定するのはいいのだが、もともとは御物だったものなので、元御物でよいのではないか。もしくは国宝や重文を歴史的価値や美術品的価値、所有歴価値など意味をつけてもおもしろい。今回の基準替えは国宝、重文などを1番、2番の意味で単純な順位づけにした指定基準替えに思える。分かりやすくの前に意味のある分類にしてほしい。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。