2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧
李迪は南宋時代の宮廷画家。戦争にはからっきしだった南宋は文化の面では花開き、宮廷画家も腕を振るには絶好の時代だった。同作品は西洋の静物画に引けを取らない素晴らしい出来。酔芙蓉は一日の間で紅から白へ変化する。それを写実的に描かれており、現物…
ゆったりとした時間が流れる中国大陸の雰囲気そのままに描かれた水墨画。国土の狭い日本にはない広々とした風景を狭い紙面にどう描くかが腕の見せ所。すべてを描かないで描いた部分から想像させるテクニックが秀逸である。 日本水墨画界の巨匠である雪舟は中…
国宝書跡で一番観てワクワクするのは、禅僧が活躍した鎌倉から室町の墨跡である。経典は格式ばった書き方で同じように写経していて面白みに欠ける。一方で和歌は美しさはあるものの読めないことも多く、書というより曲線の集合体に思えない。 その点、禅の墨…
渋谷区立松濤美術館は区立美術館とは思えない充実した展示会を企画している。西洋・東洋問わず企画していて、一度は訪れたい美術館だった。そして今回久保惣美術館の名品が渋谷で観られるとあって訪れた。 渋谷区松濤という場所自体を知らず、渋谷=スクラン…
東京都文化財ウィークは11月3日の文化の日を中心に各所で特別公開を行っている。普段は見ること、入ることができない文化財や施設を期間を決めて一度に公開している。関西でも関西文化の日を制定して大々的に行っているが、東京は都独自で行っている。 そ…
11月3日の文化の日前後に建長寺と円覚寺では宝物の風入り(曝涼展)を開催している。2019年の円覚寺は三井で展示会があった関係か開催しなかったが、建長寺では例年通り開催していた。 風入れ展は仏殿のある奥の建物で開催。その手前の法堂などの横の広場で…
建長寺は元号を冠する鎌倉五山第一位の名寺で、鎌倉の禅宗寺院の筆頭に位置する。ちなみに円覚寺は第二位だ。鎌倉幕府は平安密教との決別と、中国とのパイプを深めるために禅宗を庇護した。庇護された寺院は立派に作られ、その名残が現在まで脈々と残った。…
神奈川県内唯一の国宝建築。舎利殿は文化の日(11月3日)前後と正月三が日に一般公開している。普段は修行の場所のようで非公開。見学した時も修行僧が出入りしていた。禅宗様式の建物で、花頭窓や屋根の組み方など特徴がよくわかる。 公開は建物までで中…
北鎌倉駅近くにある円覚寺。最近では三井記念美術館で大寺宝展が開催されていたことは記憶に新しい。その円覚寺の国宝で建築物以外で移動が困難なのが「洪鐘」(おおがね)である。 洪鐘とは大きな釣り鐘のことで、1301年(正安3年)の刻銘されており、製造…
631年に中国の唐の太宗皇帝が命じて編纂した政治のための参考書。経書や晋代までの正史、その他の古来の群書から、政治上の要項を抜き出して配列している。ただ中国本土には残っておらず、平安時代に写した最古のものが日本で国宝となっている。 九条家に伝…
動産の国宝は各地で開催される展示会に出品されることがある。しかし、東洋文庫ミュージアムは貸出しているのを観たことがない。その代わりに、各企画展に1つ展示してくれるので、毎回チェックが必要。今回は北斎をテーマにした展示なのだが、国宝の文選集注…
南円堂の特別公開に合わせて北円堂も同時公開していたので、合わせて拝観した。 運慶展で多くのファンを獲得したからか、堂内は熱心に観る人が多かった。望遠鏡や単眼鏡などでじっくり観る人もチラホラおり、参拝というよりは美術鑑賞の様相を呈していた。 …
東大寺ミュージアムの絶対的エースである誕生釈迦仏立像が大英博物館での展示で不在となっている。その合間を縫って展示されているのが、東大寺の裏番長、木造弥勒仏座像だ。 横長の顔に切れ長の目、立憲民主の枝野幸男を超える福耳が相まって、忘れがたい独…
室町から明治にかけて巻物も褒美のひとつとなり、名品たちが断簡にされて名門家の家宝に仕立て上げられた。書のなかには手鏡としてそれらを収集して一冊の本に仕上げたものもある。ただ、多くは切断された単品を茶室サイズ(床の間に飾る)に合わせ、掛け軸…