国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

短刀 無銘貞宗 名物寺沢貞宗 文化庁

ふくやま美術館の展示会では林原美術館の名物九鬼正宗と文化庁の名物寺沢貞宗の2口の国宝が貸し出されていた。中央に展示してあった江雪左文字の脇を固める位置にあった。

作者の貞宗は正宗の実子とも養子ともいわれる人物で、親子共演となる展示配置となる。肥前唐津城主であった寺沢志摩守広高の所持で、その後、豊臣秀吉織田有楽斎長益、徳川秀忠へと伝わり、秀忠の遺物として紀州徳川頼宣に送られた。短刀としては少し長めであり、反りのない直線的な刀である。東博でよく展示されている名物亀甲貞宗と同じ作者で、力強さとより優雅さが感じられた。

この展示会の後に、京都文化博物館で有楽斎展があり、そこでも展示されるようだ。再開を楽しみにしたい。

短刀 無銘正宗 名物九鬼正宗 林原美術館

ふくやま美術館の展示会には9口の国宝刀が出品されていた。借り受けている刀などは撮影NG。林原美術館所蔵の名物九鬼正宗も撮影できなかった。

もともとは小早川隆景の所有だった正宗を九鬼守隆の弟に舞の褒美として授けた。しかし、九鬼の弟は関ヶ原の戦いで西軍につき、敗戦後に自害すると東軍についていた守隆の所蔵となった。そこから九鬼正宗と呼ばれ、守隆が家康に献上した。そののち、紀州藩の頼宣、その子である伊予西条藩の祖となる頼純に譲られた。中国地域に縁深い短刀である。

短刀として少し丸っこい感じで、刃紋が先端にかけて大きくなっていた。刀とともに鞘も展示されていたが、金梨地に家紋をあしらった豪華だが派手ではないものとなっていた。

太刀 銘筑州住左 江雪左文字 ふくやま美術館

昨年秋口から続く自館所蔵の国宝刀剣一気に見せます企画。東博永青文庫と続いて、ふくやま美術館の「名刀 江雪左文字 ―江雪斎、家康、頼宣が愛した刀の物語―」に会期終了前に行くことが出来た。これで、19口(東博)+4口(永青文庫)+9口(ふくやま美術館他)の計32口を3カ月で制覇し、刀剣類の国宝の約4分の1を見たことになる。

さて、企画展のテーマにも入っている江雪左文字は会場の中央に展示。ふくやま美術館は7口も国宝刀を所有しているにも関わらず、中心に置かれる刀は江雪左文字になることが多い。今回は大河ドラマ徳川家康にからめての企画だからなおさらだ。

江雪左文字の江雪は小田原城を本拠地とした戦国武将の北条氏(後北条)の家臣であった雪斎の愛刀で、後北条が滅びた後は秀吉に重用された。秀吉の死後は家康に仕えて、献上したことから、今回の展示会の主役となった訳だ。

刀としては筑前の刀工の初代左文字によって造られた。作刀に左と銘することから左文字と呼ばれている。短刀を得意とする刀工だが、これは太刀でかなり珍しい。柄の部分に5つの穴が空いていることから、摺り上げれた証拠でもう少し長い刀だったことが分かる。この穴が銘にかからないように空けられていることから、名刀への配慮が感じられる。穏やかな刃紋は刀の大きさと相まって大らかな雰囲気を感じる。このおおらかさが板部岡江雪斎の性格に影響を及ぼしたとすれば、後北条が戦わずして秀吉の軍門に下った時に橋渡しをした想いを重ねてしまう。

【親鸞と高田本山】三帖和讃 親鸞筆 専修寺

三重にある専修寺は多くの国宝を抱える。2017年に御影堂と如来堂が国宝指定を受けた。内装は金箔で華やかに装飾された絢爛豪華な仕様。建立は御影堂が1666年、如来堂が1748年と来歴もはっきりしていることから評価された。建物は現地へ行かないと見ることはできないが、三重県総合博物館で開催される親鸞高田本山では同寺が保有する国宝書跡の展示が予定されている。

三帖和讃は親鸞筆(一部のみ真筆とされる)の書跡で、浄土和讃・浄土高僧和讃・正像末法和讃の三帖からなる。日本の言葉で佛・菩薩や高僧のお徳をたたえた讃歌だ。映画などで古代ヨーロッパでは英雄譚を吟遊詩人が謳い上げる場面があるが、それのように親鸞が作詞してみんなが謳い上げるための台本を書いている。神社の詔や仏教の経典も分かる人には理解できる言語でいかに素晴らしいかを伝えているはずだが、その時代にあった言葉でないため呪文のようになっている。そこに目をつけて現代語訳する人はいるが、自分でアレンジして賛歌に仕上げたのがアイデアとして素晴らしく、浄土真宗が広まる最大の要因だったと思われる。伝わらない教えはありがたみも伝わりづらく、分かる人だけと切り捨てるのではなく、伝える方が分かるように変えていく、その過程が分かる書跡となっている。

レア★★☆

観たい★★☆

コラボ★☆☆

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【親鸞と高田本山】西方指南抄 親鸞筆 専修寺

JR紀勢本線亀山駅から二つ目の駅、一身田駅から歩いてすぐにあるのが、真宗高田派総本山の専修寺がある。浄土真宗親鸞の子孫の世襲をもって門主門首)としているのに対して、高田派は親鸞の教えのみに帰依する。

その核となるの寺宝の一つが西方指南抄である。これは源空法然)聖人の法語、伝記、消息、行状などを集成したもの。浄土宗の開祖で師匠である法然から親鸞が多大なる影響を受けたことが分かり、その教えを広めるため書き溜めた渾身の書跡である。親鸞の教えをひも解く重要なファクターは専修寺の寺宝、そして浄土宗と浄土真宗をつなぐ資料として国宝に相応しい。

レア★★☆

観たい★★☆

コラボ★☆☆

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【親鸞】親鸞聖人影像 鏡御影 西本願寺 

祖師図の多くは亡くなった後に描かれることが多く、伝聞推定から描かれる。親鸞聖人の肖像画は生前、似絵の名手である藤原信実の子、専阿弥陀仏が描いたとされる。当時同時代に生きていた人たちがまるで親鸞を写した鏡のようだと言うことで、鏡御影と称されるようになった。この国宝の付け足しとして安城御影も展示される予定。

レア★★★
観たい★★★
コラボ★★☆

5/2~5/14

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【親鸞】観無量寿経註 親鸞筆 西本願寺

親鸞の若き日の直筆。浄土三部経の一つ観無量寿経を書写して、朱筆で注釈を加えている。45歳前後の執筆物とされる。作家の井上靖はこれを親鸞聖人誕生800年の記念展で見て感動したそうだ。

浄土三部経は大無量寿経阿弥陀経観無量寿経があり、どれも親鸞の研究対象であった。親鸞筆の阿弥陀経註も国宝として残っている。

3/25~4/30 巻替あり

レア★★★
観たい★★★
コラボ★★☆

 

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国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。