国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

2022-01-01から1年間の記事一覧

【東博150年】竹斎読書図 伝周文筆

周文は相国寺の僧侶で、足利将軍家に画家として仕えていた。現在の感覚からすると僧侶が画家というのはなんとなく違和感があるが、そもそも現代ですら画業で生計を立てるのは至難の業。そして、中世ではどれだけ才能があっても見出される機会は多くないので…

【三の丸尚蔵館展】動植綵絵 若冲

若冲の動植綵絵は国宝界のスーパースター。なにせ、客を呼べる。東京芸大美術館での三の丸尚蔵館展でも動植綵絵目当ての人が多いと肌身で感じた。 展示を見る順番は3階から地下1階というルートで、3階はそこそこ人がいたが一部の作品を見る時以外は肩が触…

【東博150年】秋冬山水図 雪舟等楊筆

雪舟が四季それぞれを山水画で描いた中の秋と冬が東博所蔵となっている。山水画を描く季節としては陽気な春夏よりも、秋冬の方が見応えがある。雪舟らしさを感じるのは冬。断崖絶壁が非現実的な形で描かれており、これぞ雪舟画の真骨頂といった作品である。 …

【三の丸尚蔵館展】絵因果経 東京芸術大学

連日の猛暑の中、各地をうろうろするの諦め、涼しくなる9月を待って国宝探索を再開した。その初っ端は上野を選んだ。 東京都美術館で開催されているボストン美術館展は、国内にあれば国宝指定間違いなしの、平治物語絵巻(三条殿夜討巻)や、吉備大臣入唐絵…

【東博150年】納涼図屏風 久隅守景筆

なんともゆるい作品である。内容しかり、描き方しかり。ゆるい雰囲気は建物と軒下の構造がきっちりしていない点が拍車をかけている。このゆるさが納涼にはちょうど良い。暑い夏に見るべき作品。でも、ピカソが評価されると同様に、久隅守景は狩野探幽の弟子…

【東博150年】洛中洛外図屏風(舟木本) 岩佐又兵衛筆

浮世絵の源流とも言われる岩佐又兵衛の作品は人物がそれぞれ生き生きしている。源氏物語や伊勢物語、浄瑠璃物語、小栗判官絵巻などストーリ性の高い作品を手掛けている。洛中洛外図屏風は屏風内に数多くの人物が描かれており、その一人一人にストーリが感じ…

【東博150年】観楓図屏風 狩野秀頼筆

花を愛でる習慣がある一方で、紅葉狩りの習慣が日本にはある。狩野秀頼は楓を愛でる人々(といっても高貴な人)を描いた。それぞれ派手でよそ行きの着物を着て、老若男女問わず楽しみ、生き生きしている姿を描いている。そこに色づいた楓と遠くに白化粧した…

【東博150年】檜図屏風 狩野永徳筆

狩野派のイメージを決定づけた作品のひとつは檜図屏風だろう。武将が好みそうな豪快で力強い檜の大木を実寸以上に派手に仕上げた作品となっている。永徳以降の狩野派の絵師たちが将軍のお抱え絵師になり、各所に屏風絵を描くことになるが、この派手さを超え…

【東博150年】松林図屏風 長谷川等伯筆

長谷川等伯筆の松林図屏風は東京国立博物館のお正月の顔となる作品だ。三井記念美術館所蔵の円山応挙筆・雪松図屏風とともに、冬の名物作品である。今回の記念展では最初の2週間限定で公開される。松林は冬に見ることが多いので、寒いイメージがあるが、も…

【東博150年】花下遊楽図屏風 狩野長信筆

桃山から江戸時代にかけての花見の風景を描いた屏風。狩野永徳の末弟である長信によって描かれた。関東大震災で右隻の2扇が焼失したが、それでも踊りながら楽しく花を愛でる人々の描写は残っている。遊楽図とはまさにこのこと。コロナ禍になった現在、改めて…

【東博150年】鷹見泉石像 渡辺崋山筆

渡辺崋山筆の鷹見泉石像は人物画なのだが、服は線描を使った東洋の伝統的な画法に対して、相貌は西洋の陰影法や彩色法を取り入れて描かれた。国宝人物画には神護寺所蔵の伝源頼朝像などや、金沢北条氏四将像、高僧や天皇家など教科書で一度は目にした人物た…

【専修寺展】西方指南抄 親鸞筆、三帖和讃 親鸞筆

三重県にある高田本山専修寺の宝物館の改修工事がもうすぐ終わる。そして、2023年は親鸞聖人生誕850年の記念イヤー。すでに京博で2023年3月25日より「親鸞 生涯と名宝(仮)」が開催されると発表があった。専修寺の国宝は公開されるのかとネットサ…

【東博150年】楼閣山水図屏風 池大雅筆 

池大雅は与謝蕪村とともに南画の大家。楼閣山水図は6曲一双の大作で、宋代の図を参考に、楼上には文人墨客が集って雅会を催している風景と、湖水が長江に注ぐありさまを描いている。単なる水墨画ではなく、緑青、群青、朱などの濃彩を用いて視線を誘導して…

【東博150年】瀟湘臥遊図巻 李氏筆

中国の水墨で描いた山水画は静寂の中にあって、その風景に吸い込まれる。瀟湘臥遊図巻も宋代の傑作で乾隆帝コレクション中の四名巻の一つとして珍重された。なので、名のある北宋末に活躍した文人画家の李公麟の作品と考えられてきたが、同郷の李という画家…

【東博150年】寒山拾得図 因陀羅筆

因陀羅筆の寒山拾得図は断簡された絵画がそれぞれ国宝指定となっている。5つが指定を受けているが、その一つが東博所有。5つつすべてが一度に同じ場所で公開される時が来るのか。曜変天目茶碗3つ同時に同じ場所公開よりも可能性はあるが、果たしてどんな企…

【東博150年】紅白芙蓉図 李迪筆

紅白芙蓉図は宮廷画家(画院画家)であった李迪が描いた。花や鳥や動物を描くことを得意とした画家で、忠実に写実している。若冲の動植綵絵のような本物より本物らしい絵画ではないが、美しい瞬間を切り取り永遠に残した作品だ。それを茶室に合うように日本…

【東博150年】出山釈迦図・雪景山水図 梁楷筆

足利家は日明貿易を軸に莫大な富を築き上げた。その貿易では大陸からもたらされた文化財も多く輸入された。その中で特に良いものは将軍の御愛用となり、東山御物と呼ばれる一群を形成する。その東山御物となったなかに、梁楷筆の出山釈迦図・雪景山水図があ…

当麻寺 西塔

東塔を後にして、西塔へ向かう。こちらも立て看板でしっかりと案内しているので迷うことはない。塔の手前で、東塔と同じく検温と連絡先を記載して塔へと向かう。 西塔は12年前の公開時、劣化のため基壇に上がることができなかったそうで、修繕を終えた今回…

当麻寺 東塔

当麻寺は4月に訪れたばかり。奈良博の特別展・中将姫と當麻曼荼羅の予習を兼ねていた。今回は復習を兼ねて訪れた。ただ復習だけでは物足りないので、国宝塔で唯一双塔が残っているが、特別展に合わせて初層を開放しているので、それに合わせて行くことにし…

【河内長野の霊地】日月四季山水図屏風 天野山金剛寺

日月四季山水図屏風は2018年に国宝の指定を受けた。金剛寺の特別公開などでたまに公開している。今回の展示会ではキービジュアルにも使われている。展示品の中で美術的なインパクトは一番ある。 屏風は右から春夏秋冬の山脈のうつろいを表し、春夏は日、秋冬…

【河内長野の霊地】剣 附黒漆宝剣拵 天野山金剛寺

国宝に指定された刀の中で、刀身が湾曲しているいわゆる日本刀は数多くある。これは戦後のGHQが価値を全く無視して日本刀=武器として接収したことに対する反動である。古来から現在に至るまで刀は武器であるが、その中には奉納品や来歴を受け継いだ先祖代々…

【河内長野の霊地】延喜式神名帳 天野山金剛寺

奈良時代、大陸と同等に渡り合うため国をどのようにするかを文章化した、いまで言う憲法のようなもの「律令」を制定して統治を始めた。大宝律令が有名だが、大まかな方針は指し示しているだけなので運用面では不十分な部分が多い。そこで、式という細かな部…

【河内長野の霊地】観心寺勘録縁起資財帳 観心寺

2022年夏の京博特別展は河内長野の霊地にスポットを当てた展示会だった。観心寺と金剛寺展といっても差支えがない内容となっている。 展示は2階と1階で完結。3階は関係のない展示であった。ショーケース内にも解説や写真が展示したいたことから、展示…

【東博150年】賢愚経断簡(大聖武) 伝聖武天皇筆

聖武天皇宸筆の伝承があるもので、1行12字前後の堂々とした大字で書写されているものを大聖武と呼ぶ。大聖武は手鏡の最初に貼るものとして、日本の書で最重要とされる。紙が貴重な時代に、大きな文字で書けること自体が高貴にほかならない。のちの禅宗の扁額…

【東博150年】寛平御時后宮歌合(十巻本) 伝宗尊親王筆

近衛家に伝来した十巻本歌合の一部で、その巻第四に含まれているので「十巻本」とも呼ばれる。歌合せは左右1首ずつ組み合わせた短歌の優劣を競う行事。宇多天皇の代に皇太后が主催した歌合せ計200首からなる。 レア★☆☆観たい★☆☆コラボ★☆☆ 公開期間:後期 emu…

【東博150年】延喜式

平安時代中期に律令の施行細則をまとめた法典が延喜式である。全50巻からなるが、古写本は27巻分が現存し、1巻を除く残りすべては平安時代後期に書写された現存最古の写本が国宝となっている。九条家に伝わってきたことから九条家本という。 レア★☆☆観たい★☆…

【東博150年】法華経方便品(竹生島経)

琵琶湖の北の方に浮かぶ竹生島に奉納された経典。もとは法華経8巻がそろっていたと思われるが、現存するのは、方便品の1巻と、宝厳寺に残る折本仕立ての序品の1帖だけけ。湖に囲まれた島への奉納のため、上質な紙に文様を描いた上に写経されている。 レア★☆☆…

【東博150年】円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書 小野道風筆

円珍は死後36年目の延長5(927)年に、醍醐天皇から法印大和尚位と智証大師(ちしょうだいしの諡を贈られた。この時の勅書が国宝で、執筆者が三蹟として知られる小野道風ということで、二重の意味で希少性が高い。 レア★☆☆観たい★☆☆コラボ★☆☆ 公開期間:前期…

【東京150年】円珍関係文書

円珍が入唐する前後の関係資料が国宝となっている。8巻あり、自筆の書状のほか、円珍の経歴を示すもの、唐への出発にあたって発行された証明書などがある。日本の僧が大陸に渡った記録としても貴重だが、円珍の書き残した書としても歴史的に価値が高い。 レ…

【中将姫と當麻曼荼羅】綴織當麻曼荼羅 軸内納入文書 當麻寺

国宝の綴織當麻曼荼羅は修繕を終えたとはいえ、かなりボロボロ。大きさもかなり大きいので展示するにはスペース確保や劣化防止など気を使わなければならない。そのため、今回の展示には出品されていなかった。 代わりではないが、国宝附属品として軸内納入文…

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。