若冲の動植綵絵は国宝界のスーパースター。なにせ、客を呼べる。東京芸大美術館での三の丸尚蔵館展でも動植綵絵目当ての人が多いと肌身で感じた。
展示を見る順番は3階から地下1階というルートで、3階はそこそこ人がいたが一部の作品を見る時以外は肩が触れ合うこちは少なかった。しかし、地下1階の動植綵絵の前には人混み。3列・4列と並んでおり、ガラス面には到底たどりつけない人の多さだった。東京都美術館での若冲展が入場300分以上待ちだったことを考えると、コロナ禍で人が減ってこの混雑となっていた。
さて、今回の展示は京博で開催した際には展示のなかった10幅(芍薬群蝶図、梅花小禽図、向日葵雄鶏図、紫陽花双鶏図、老松白鶏図、芦鵞図、蓮池遊魚図、桃花小禽図、池辺群虫図、芦雁図)が掛かっていた。若冲=鶏というイメージが強いが3幅が題材となっていた。そのほか、リアルの動物と植物のコラボがあり、色味が同じようなものを並べているので、擬態となっているように見えて探すのに苦労するものもあった。
近づいて見ることは叶わなかったが、遠くから見ても鮮やかさは絶品で、新しくできる三の丸尚蔵館の展示室に映えることは間違いない。さて、動植綵絵の近くに、芸大のマスコットにもなっている高橋由一の鮭(重要文化財)が展示してあった。動植綵絵を見るのに疲れた人は素通りしていたが、これもまた逸品。未来の国宝候補を国宝の近くに配置して見比べられるよう配慮した辺りは、芸大で開催した意味が大いにあった。