連日の猛暑の中、各地をうろうろするの諦め、涼しくなる9月を待って国宝探索を再開した。その初っ端は上野を選んだ。
東京都美術館で開催されているボストン美術館展は、国内にあれば国宝指定間違いなしの、平治物語絵巻(三条殿夜討巻)や、吉備大臣入唐絵巻などが出品されていた。その他にも東西の美術品が来日しており眼福を得た。
そして、歩いて数分の場所にある東京芸術大学大学美術館では、日本美術をひも解くと題して、三の丸尚蔵館所蔵と東京芸大所蔵の名品のコラボ展が開催されていた。こちらには三の丸尚蔵館所蔵の国宝5点が出品。前期のみの展示の狩野永徳筆・唐獅子図屏風は終わっていたが充実したラインナップとなっていた。
展示は3階と地下1階のスペースを利用。初めに3階から見る。こちらにある国宝は絵巻物と書で、春日権現験記絵と蒙古襲来絵詞は人気があり、人だかりができていた。以前の京博開催時にじっくり見たので、後ろから覗く形で拝見した。この他の絵巻物で西行物語絵巻、小栗判官絵巻、酒伝童子絵巻も人を集めており、絵巻物ブームの到来を予感させた。
一方で、地味な絵因果経はじっくり独り占め。古い時代に制作されたため、絵自体は平面的でのっぺりとして、他の作品に比べると迫力は全くない。さらに、経典を教えるためのものなので、分かりやすい中にも説教くさい場面が多く、敢えてじっくり見る人が少ない。芸大所蔵国宝であるためか、置き場所も導線のなかにあり目立つ位置にないのは展示会の主賓である三の丸尚蔵館所蔵品に配慮したからかもしれない。
書の国宝としては唯一、小野道風筆の屏風土代が展示。最近の展示では書が見やすいように少し角度をつけた展示台が多いが、芸大で書の展示をすること自体珍しいためか、平置きとなっていた。