日月四季山水図屏風は2018年に国宝の指定を受けた。金剛寺の特別公開などでたまに公開している。今回の展示会ではキービジュアルにも使われている。展示品の中で美術的なインパクトは一番ある。
屏風は右から春夏秋冬の山脈のうつろいを表し、春夏は日、秋冬が月下の雰囲気を描き上げている。全体的に水墨による山水画が表す風景を大和絵風に描いた作品で、和中折衷に加えて仏教で重要な儀式である灌頂に用いる道具としての機能も持たせている。
図としては山に生える木々の葉や花が胡粉を用いて盛り上げて描くことで、山並みとの違いを表現して立体的な効果を演出している。山の下部には波が描かれ、琳派や狩野派などが描くそれとよく似た図案となっている。ただ、月や波などには銀を用いているため、黒く変色して往年の美しさが分からないのは残念である。室町時代に作られたとされているが、足利家による東山文化の全盛期で唐物が重宝された時代から戦国・安土桃山時代へと移った。そこで、戦国大名好みのやまと絵屏風の発注をしたのだとすると、時代の変化に敏感なパトロンだったことが想像できる。謎が多い作品なので、折々で注目したい。