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【根津 国宝・重文】漁村夕照図 牧谿筆

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2020年はオリンピックイヤーであったことから、東京の多くの美術館で国宝の展示が企画されていた。しかし、コロナでオリンピックが延期されたことで三菱財閥の至宝たちの展示は来年に持ち越し、一方で三井財閥は開館15周年として記念美術館で今夏に開催した。根津美術館の国宝・重要文化財展はどうなるかと思っていたが、開館80周年の記念イベントとして今年の開催となった。

根津美術館は国宝7点、重文88点を所有する国内屈指の美術館である。東武鉄道創始者の初代・根津嘉一郎が日本美術と東洋美術を中心に収集。2代目・嘉一郎が設立した財団が美術館をつくり公開が始まった。その審美眼の確かさと衆目を集めることが、国宝や重要文化財につながっている。(非公開の文化財だと指定させないこともあるらしい)

さて、展示会で石仏と古代の青銅器の一部、アンティーク時計を除き、陳列されている品々すべて国宝か重要文化財である。具体的には第一、二、五、六室はすべて重文以上。所有物のみで国宝・重文展が開催できる質・量を備える美術館は数えるほどしかないだろう。

訪れたのは11月で第一室に入って山水画の出迎えがあり、4作品目に国宝の因陀羅筆・楚石梵琦賛の布袋蔣摩訶図が展示されていた。断簡された5幅がそれぞれに国宝指定されている因陀羅筆の作品で、ふくよかな布袋様と親孝行の蔣摩訶が問答する様が描かれている。

その左右には牧谿作が囲む。右には竹雀図で、こちらは伝となっているので真偽は不明。雀の毛並みと腹の白い部分の描き方が秀逸であった。そして、 国宝の漁村夕照図。瀟湘八景のひとつで、同系の国宝では畠山美術館が保有する煙寺晩鐘図がある。靄のかかった山々に船を浮かべて投網をする漁民たち。なにげない風景を水墨画の濃淡だけで描いている。足利義政が愛した逸品で、八幅に断簡したが因陀羅筆と違いこちらは2幅のみ国宝となっている。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。