泉屋博古館東京で開催されている「古美術逍遥 東洋へのまなざし」展は住友家が集めた名品が揃っている。リニューアルを記念して出版した泉屋博古館名品選99に掲載された半数近くのコレクションが展示されている。
第一室は中国の明から清時代の中国画、第二室には日中韓の仏教美術を展示していた。第三室は日本美術品。数寄あらばと題して、茶室に合う様々なコレクションを陳列していた。佐竹本三十六歌仙絵切の源信明は京博でも見た逸品。少し離れた場所には上畳本三十六歌仙絵切の藤原兼輔を展示していた。日本の絵がほとんどの中、国宝の秋野牧牛図は別格として展示していた。紙自身が劣化しているためか、全体的に黒くなっており、水墨画の肝となる濃淡が見難くなっていた。それに加えて、隣に艶やかで精密な伊藤若冲の海棠目白図が飾られ、佐竹本三十六歌仙絵切の源信明と挟まれて展示しているので、秋野牧牛図が全く目立たない。あくまでも流れに沿った展示順を貫くのが泉屋博古館なのだろう。
秋野牧牛図は東山御物として足利家に重宝された品。南宋画で宮廷画家の閻次平が描いたされているが、活躍した時期と比べて少し後の作品なので伝となっている。雄大な自然と穏やかな秋の昼下がりに牛もまったりと描いており、喧騒を忘れさせる茶室にぴったりである。