三菱1号館美術館は赤煉瓦の重厚な作りである。室内にはマントルピースが各部屋にあり、それぞれが意匠を凝らして室内演出に貢献している。あくまでも実用的な建物であるため、展示施設として作られた建物ではありえないぐらい豪華な部屋になっている。
この明治の洋館に中国の水墨画はマッチするのか。国宝の馬遠作と伝わる風雨山水図は作品の奥深さに引き込まれるので、じっくりと観ているうちは水墨画内の主人公になった気分で魅了される。ところが、俯瞰で観ると周りの洋風とのアンマッチな感じがあり、客観的な水墨画として見ている自分がいる。オンオフがつけやすい環境であるので、雪舟の絵巻物などをこの雰囲気で観ると今までと違った没入感なしで観ることができるかもしれず、新たな展示環境の可能性を感じた。