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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

雪中帰牧図  李迪筆 大和文華館

和文華館で開催中の染織品と松浦屏風ー織物・染物・刺繍 いろとりどり―で同館所蔵の雪中帰牧図が出品されていることを知る。織物でも染物でも刺繍でもなく、描かれている内容にもそれらの要素がない。気になったので見に行った。

テーマでもある染織品で思い出すのが、東博で開催されたきもの展だ。衣食住の筆頭である衣の中で、美術的に価値の高い和装を大量に集めた内容で、現代ファッションのアバンギャルド感が昔から続いていることが面白かった。

今回の大和文華館のテーマは染織品で、最終コーナーで琉球きものが4着だけ展示していたが、それだけでも東博のきもの展を思い出した。展示は古代の染織物技術が大陸から伝わった資料から始まり、中国やアジア圏から輸入された品を展示。桃山時代から江戸時代にかけての華やかな衣装を絵画で見せていた。

さて、本題である雪中帰牧図ももちろん展示していあった。水墨画の中でも雪の風景は派手さは全くなく、むしろ寒空の帰り道でシンプルさを追求している。本展示会のテーマに当てはまるのは国宝の絵ではなく、それを飾るための表装であった。足利将軍家が茶道具のひとつとして持っていたとされる雪中帰牧図 は東山御物と呼ばれ、大変珍重された。そのため、その絵に相応しい表装がなされている。つまり、このテーマにおいては雪中帰牧図自体を見せるより、表装を見てほしいという内容となっている。気にいったのが、地味な絵を邪魔しない文様が配置された生地を3段階で張り合わせて掛け軸に仕上げている。その文様の印金技法も派手さがないのとても雪中帰牧図に合っている。

隣に飾っている安芸藩浅野家から伝わった馬遠筆とされる竹燕図だと、箱と絵を包む帙も展示していた。箱と帙をどこかで見たことがあると思ったら、2019年に広島県立美術館で開催された浅野家入封400年を記念した展示会でも、絵とともに箱と帙が展示されていた。浅野家がいかに大事にしたかを示すのに一番わかりやすい展示方法なのだろう。大切に受け継ぐべきものに対して、それにふさわしい染織品を用いる。気の行き届いた点をすべて合わせて文化財なのである。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。