李迪は南宋時代の宮廷画家。戦争にはからっきしだった南宋は文化の面では花開き、宮廷画家も腕を振るには絶好の時代だった。同作品は西洋の静物画に引けを取らない素晴らしい出来。酔芙蓉は一日の間で紅から白へ変化する。それを写実的に描かれており、現物を観ているような美しい出来栄えである。
水墨画の空想的な部分もよいが、写実性を重視した彩色絵も観ていて飽きない。西洋画の静物画は光の加減による明暗を重視する傾向があり絵に情報量が多い。そのため見続けると疲れてくる。その点、東洋画はあくまでも対象物の情報を重視して書くので、周りに左右されない描き方をする。琳派の酒井抱一や鈴木其一などが描く植物と並べてみたい。