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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

五智如来坐像 安祥寺

奈良国立博物館で開催されている「空海 KUKAI - 密教のルーツとマンダラ世界」展は、仏教美術の殿堂である奈良博の企画力を遺憾なく発揮された素晴らしい展示会となっていた。

事前に知り得た情報では、この展示会の目玉は神護寺の国宝・両界曼荼羅が修繕後に美術館で初公開される点であった。展示品の中で目玉展示であることは疑いようはなく、そこに空海関連のものが出品されるだけだろうとたかをくくって訪問した。

1階入り口で受付を済ませて、階段を上がり右手に東新館2階の展示室入り口から内部ちらっと見えた。その瞬間、いつもの奈良博の特別展と雰囲気が違った。奈良博で一番広い東新館の展示室に間仕切りがしていない。大抵は2階の入り口から初めに見えるのは間仕切った壁に展示会の名称ロゴだが、今回は一番奥の正面に展示している両界曼荼羅(通称:血曼荼羅、前期のみ)まで見渡せた。この違和感が入ると確信に変わった。

中央に安祥寺の五智如来坐像が十字にフォーメーションを組んで鎮座。右サイドには大日如来坐像とショーケースに十二天像、反対には不動明王坐像とショーケースに五大尊像と真言八祖像が並ぶ。正面に入り口から見えていた両界曼荼羅図とその前に両部大壇具が置かれ、真言密教がこの場所で行われてきたかのような風景を再現していた。この後、密教のルーツに関するものや曼荼羅などの展示が西新館にて公開されていたが、東新館の空間は実践的な空間となっていたのだ。

このライブ感を作り上げている主人公は安祥寺の五智如来坐像である。これまで何度となく京博でお会いしてきた。横一列に整列しての展示(京博のスペースの問題)で、それぞれの像をじっくり見てきたつもりだ。にも関わらず、奈良博で見る五智如来坐像はなぜか躍動感を感じる。これはまるでテレビで見るアイドルとライブで生き生きする姿の違いのようであった。そこでシンクロしたのがperfumeだった。たまにテレビなどで見るインタビューやMC、ゲスト出演など、それはそれでよいのだが何か物足りない思い出見てしまう。それが歌い出す(と言っても見たのはNHK紅白歌合戦かプロモーションビデオ)と、圧倒的なパフォーマンス力で心をわしづかみされる。奈良博でフォーメーションを組んだ五智如来坐像も同じ感覚だった。横一列もそれはそれでよいが、十字に配置することでマンダラが完成し、東新館に密教的支配空間を作り上げていた。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。