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大般若経巻第三百四十八(長屋王経・和銅経) 太平寺

奈良時代に藤原家との戦った側の痕跡は経典に残っている。

太平寺に残る大般若経は、和銅5(712)年の記載がある経典である。この経典は長屋王壬申の乱の勝者である天武天皇の長男・高市皇子の子)が発願した。文武天皇天武天皇が父、息子が聖武天皇)が25歳の若さで崩御したことを憂いて作ったものである。大般若経は600巻からなり、大平寺に142帖、常明寺に27帖、見性庵に43帖(これは重文)がまとまって残っており、断簡も確認されている。長屋王はこの後、神亀5(728)年にも大般若経を自分の父母のための冥福と歴代の天皇の奉為を願って書写させている。(神亀経は根津美術館などにある)

写経好きの長屋王ではあるが、藤原家とは相性が悪かった。藤原不比等の娘・藤原宮子と文武天皇の子である聖武天皇から見ると、長屋王天武天皇の長子の子(直系の孫)という立場から天皇の座を狙える血筋であると考えられた。そのため、藤原不比等の息子4兄弟(武智麻呂が長男、房前が次男、宇合が三男、麻呂が四男)の謀略にかかり、妃吉備内親王とともに729年に自殺に追い込まれた。天皇家のために写経された神亀経が最後の大事業だったと思うとなんとも皮肉である。

 

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。