国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

奈良県藤ノ木古墳出土品 文化庁

奈良県藤ノ木古墳出土品は文化庁所蔵で奈良県橿原考古学研究所附属博物館が保管する文化財である。この古墳は斑鳩町にあり、法隆寺から350メートルほどしか離れていない場所にある。法隆寺はもともと聖徳太子が住んでいたとされる場所なので、人々の往来は多かったことだろう。にもかかわらず、盗掘にも合わないで残っていたのは奇跡的である。法隆寺に伝わる文書では、少なくとも平安時代末期ごろ以降は古墳の南隣に堂宇が建てられて、被葬者を供養するとともに大切に守られてきたようだ。

未盗掘の横穴式石室からは副葬品として金銅製の馬具や装身具類、刀剣類などが見つかっている。古墳の規模から大王クラスではないが、石製の装身具が全くないことから位の高い人が埋葬されていたと分かる。発見された装身具は細やかなデザインが見て取れるぐらい壊れずに残っていて、古代の職人たちのレベルの高さが見て取れる。古代の政治の中心地での発見と共に、レベルの高い副葬品が埋葬儀礼を解明につながっている。

www.town.ikaruga.nara.jp

群馬県綿貫観音山古墳出土品 文化庁

令和の国宝である群馬県綿貫観音山古墳出土品は文化庁が所蔵しているが、保管は群馬県立歴史博物館となっている。綿貫観音山古墳は6世紀の後半に築造されたと推定される古墳である。被葬者は分かっておらず、そのためもあってか未盗掘の古墳から大量の副葬品が見つかった。

古墳は生前の権力を対外的に示すため、より大きくて副葬品などをより豪華に埋葬する。そのため、時代を経て威厳が低下するとともに墓荒らしに合う。有名なものほど盗掘される。

忘れ去られた綿貫観音山古墳には、東日本で古墳の副葬品で最もまとまったものであり、日本国内はもとより大陸との交易で入手した朝鮮半島や中国の同時代史の中でも重要な位置を占める文化財もある。埴輪が18点は見ごたえ十分。古墳時代を知る文化財の量として国宝に相応しい。

grekisi.pref.gunma.jp

奈良県東大寺山古墳出土品 東京国立博物館

奈良県東大寺山は天理市にある。東大寺とあると奈良市内を想像するがそうではない。自然地形を利用した北向の前方後円墳で、 「中平」銘金象嵌花形飾環頭大刀は紀年銘をもつ日本最古の遺物が見つかった。中平とは後漢霊帝の年号で、184~189年である。そして、この時期に魏志倭人伝では倭国乱、宋書では倭国大乱が終結したとされる2世紀の末と一致する。大刀に後漢の年号の記載と、日本の前期古墳に特有の直刀とは違うことから、大陸から来たもの推定される、中国との通商があったことを示す重要な出土品となっている。さらにその他の出土品でも碧玉製腕飾類計51点は全国8番目、銅鏃・坩形石製品と鍬形石26点は最多と豪勢な埋葬品であることから、埋葬者はかなりの地位である。

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武蔵埼玉稲荷山古墳出土品 埼玉県立さきたま史跡の博物館

埼玉の由来となった場所にある古墳、埼玉(さきたま)稲荷山で発掘された出土品は日本の歴史を記す古事記日本書紀の記述を裏付ける発見となった。

出土品した金錯銘鉄剣は、115字からなる銘文が刻まれていた。その内容がヤマト政権との関係性が分かるもので、被葬者が大首長またはその一族の有力者とされる。辛亥年と年号が刻んでいることから五世紀の古代社会の史料として、現存最古の日本の文章である。文字数も古墳時代に見つかっているもののなかではかなり多く、国宝指定に納得の出土品である。

sakitama-muse.spec.ed.jp

肥後江田船山古墳出土品 東京国立博物館

先週は古墳時代の遺跡で大発見が相次いだ。熊本城跡から出土の鉄刀は甲子年の銘文が刻まれていて、聖徳太子時代に地方に配られた可能性が高まった。そして、日本最大の円墳である奈良県の富雄丸山古墳では前例ない盾形銅鏡出土した。ニュースでは国宝級とも言われているが、国宝の指定を受けた古墳時代の出土品にはどのようなものがあるのか。

古墳時代のもので国宝指定を受けているのは12件あり、そのうち誉田八幡宮の金銅透彫鞍金具2具分、隅田八幡神社の人物画象鏡、石上神宮の七支刀、日向国西都原古墳出土金銅馬具類は五島美術館が所蔵、群馬県太田市で出土した埴輪武装男子立像(東博所蔵)はそれぞれで指定を受け、残りは出土品を一括で指定を受けている。この一括指定分を見ていきたい。

熊本県西部に位置する船山古墳は5世紀後半から6世紀初めに築造された前方後円墳で、明治時代の発掘で豪華な副葬品が一括して出土した。
 副葬品で有名なのが銀象嵌銘のある大刀で、ほか刀剣や、甲冑などの武器・武具類、金銅製冠帽や沓、金製の耳飾、玉などの装身具、6面の銅鏡、馬具、陶質土器が見つかった。
 大刀の銀象嵌銘は、埼玉県行田市の稲荷山古墳から出土した鉄剣の金象嵌銘とともに、本格的な記録的文章としては日本列島で書かれた最古の例であるため、国宝指定に相応しい。また、熊本の立地から朝鮮半島から輸入されたであろうものが多く、埋葬された人物たちが、日本列島と朝鮮半島との関係において、重要な役割を担っていたことが想像される。日韓の歴史面からも重要な国宝である。

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油滴天目茶碗 大阪市立東洋陶磁美術館

2025年に大阪で開催される万博を前に、 大阪市立東洋陶磁美術館はリニューアル工事を行っている。再開は24年春を予定していることから、同館所蔵の名品たちが各地へ巡回している。

この巡回で最も気合の入っている展示会となりそうなのが泉屋博古館東京で3月18日から開催される特別展である。なにせ、 大阪市立東洋陶磁美術館が開館されるきっかけを作った住友グループが前面バックアップしている美術館だからだ。

 大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションは大阪に本拠地があった安宅産業の資金でオーナーが集めた陶器を中心に形成している。そもそも安宅産業の破綻により、事業は伊藤忠商事が吸収合併した。その他の集めた名器を含む残存財産は金融機関が償却して受け皿の会社で預かっていた。散逸することを惜しまれる声が高まるとともに、住友グループの協力を持って、陶器コレクションは大阪市に寄贈。(蛇足だが受け皿の会社に移す前に、速水御舟の名品たちは山種美術館が購入している。)この寄贈品を展示する施設が東洋陶磁美術館である。なので、住友グループには多大なる恩がある。昭和の時代だと住友と言えば関西のイメージがあったが、平成に入り企業合併が相次いだため、関西のイメージは薄らいでいる。縁の深い住友系美術館、しかも東京での特別展は、東洋陶磁美術館いや安宅コレクションの名器を惜しみなく楽しめることだろう。sen-oku.or.jp

北海道白滝遺跡群出土品 遠軽町埋蔵文化財センター

東博で行われる今年度分の新指定国宝・重要文化財展が1月31日〜2月19日で開催されることとなった。コロナ前までは、前年度分の新指定国宝・重要文化財を4月中旬からゴールデンウィーク最終盤までの期間で開催していた。しかし、気候の良い春先だと人が集まると予想されることから、2月の寒い冬場での開催にしたようだ。

ここしばらくは開催していなかったが、コロナ禍でも国宝指定は続いていた。ただ、選択する文化財宮内庁三の丸尚蔵館が加わるようになり、大味な指定が多くなり、なんらかの展示会で見たことがあるものが多くなった。

その中でも北海道白滝遺跡群出土品は見たことがなく、三の丸尚蔵館所蔵の3点とは違い、本展示会への出品がある(ほかの3点はパネル展示のようだ)。北海道まで見に行くのもよいのだが、地方の国宝を観るのに一番都合がつきやすいのが東博でのお披露目展であることは間違いない。期間が微妙に短いのが難点だが、なんとか都合をつけて見に行きたい。

www.bunka.go.jp

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。