国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

2023年を振り返って

2023年も多くの国宝を観た。今年は親鸞聖人生誕850年であったころから、浄土真宗系の一大生誕展示会が行われた。京博では各派の寺宝をこれでもかと展示。なかでも、教行信証の坂東本、高田本、西本願寺本が並ぶ展示は何度でも見比べたくなる贅沢な空間であった。あと、親鸞がとても筆まめな人であることが分かった。観無量寿経註・阿弥陀経註のまるで空間を埋めるが如き書き込みぶりは探求に燃える情念そのものであった。三重県立総合博物館では高田派の寺宝展を開催。親鸞の教えのみを拠り所とするため、弟子たちが必死に書き写したものや、親鸞が称える聖徳太子への信仰など、それらの宝物を伝え引き継ぐ高田本山の総力を見た。

弘法大師も生誕1250年で香川県ミュージアムなどで誕生祝い展示会が行われた。そのほか、東寺や醍醐寺などでも特別展や特別公開が行われていた。東寺では風信帖、そして見なかった両界曼荼羅図(来年春に奈良博で公開を知ったのでそちらで見ることにした)の展示があった。醍醐寺五重塔の特別公開を実施していた。国宝ではないが、各地の空海ゆかりの寺院でも特別公開があったようで、真言宗系の一大イベントが行われた年であった。良弁僧正御遠忌1250年も今年で、東大寺では大法要と特別公開、石山寺でも関連した展示を行った。

年始から振り返ると、出だしは国宝・刀剣祭から始まった。昨年あった東博開館150周年全部みせます展で19件の国宝刀剣類を見たはずだが、年が明けて福山で9振、永青文庫で4振の展示を見た。約3カ月で33件の国宝刀類を見るとは思っていなかった。2018年秋に京博で開催された京のかたなでも数多くの国宝刀を見たが、期間と場所の違いはあるにせよそれを上回る刀剣祭りとなった。

春先に新型コロナが2類から5類へ移行された。そのタイミングで中尊寺金色堂を見に行く。2回目となるが十数年前だったので、記憶があやふやで国宝巡りという大義名分で訪問の機会をつくった。寺宝などを見ることができ満足だった。その後に東博での特別展(2024年1月開幕)が発表された。寺宝との再会がこれほど早くできるとは、今からワクワクしている。白水阿弥陀堂へもこのタイミングで行った。お堂の周りを池が囲む浄土式の寺院だが、まさか9月の台風で被害にあうとは思っても見なかった。熊本の青井阿蘇神社も行った1年後に水浸しとなる被害にあったことを思うと、見に行ける時に訪問しておくべきだと改めて思った。

世相的に外出に対して温和になっても、美術館・博物館での特別展の仕込み不足が顕著となって見たい展示会がなかなか出てこず。夏場は大河ドラマに合わせた徳川家康関連が辛うじて琴線に触れる。なので、見逃していた国宝建築を見に富山と長野へ行く。建築物は現地へ行かないと見ることが出来ない。高岡の勝興寺、瑞龍寺は趣向の違う寺院だが、ともに立派で信仰者たちの尊敬を集めそうな佇まいをしていた。高山の安国寺の経堂は行くのが大変。田舎で交通手段がない典型的な場所で、国宝がないと行くことはなかっただろう。

秋は滅多に見ることが出来ない国宝の公開が結構あった。山梨の菅田天神社の甲冑は現地で見るしかないにも関わらず、アナウンスが間際でないとされないことが多い国宝。今回はコロナ後の久しぶりの秋祭りを盛り上げるため市政だよりに掲載する力の入れようだったので、見に行くことが出来た。武田薬品工業の財団が管理する杏雨書屋の国宝もほぼ展示会では見ない。秋に記念講演会を毎年開いて、その際に特別企画展を開らくがそこでも出ない。今回はこの国宝を収集した内藤湖南の遠忌90年(叙勲100年)の記念で出たのかもしれない。

今年一番の国宝ヒット企画は間違いなくやまと絵展である。コラボ期間は短かったが四大絵巻を揃えて展示したのは東博の交渉力があってこそなしえた。絢爛豪華さは見るものを圧倒し、地獄絵系は恐怖へ陥れるおどろおどろしさを持っていた。東博の人気企画展は4期に分けての展示が主流になりつつあり、費用面で苦戦するのが難点。公開リストが早めに上がっているので、見たいものだけを見に行けるのがせめてもの救いだ。(ほかの特別展でも早めにリストを上げてほしい。)

今年見てよかったベスト3は、➀親鸞展の観無量寿経註・阿弥陀経註②菅田天神社の小桜韋威鎧兜大袖付③やまと絵展での伴大納言絵巻である。(順不同)

親鸞の注釈付き経典はとんでもない文字量が欄外に書かれていて、その熱量が伝わってくる。これに感化されたら最後、親鸞の英知を広めるべく突き進む動力となって布教活動に勤しむ気持ちがなんとなく理解できた。

小桜韋威鎧兜大袖付は県外での展示がない限り2度と見ることはない国宝。平安時代の甲冑で武田家の家宝という戦国ロマンを感じる代物である。昨年の信玄生誕500年で公開されることを期待していたが、予想の1年遅れでの公開だったこともあり、見ることが出来て感無量である。

伴大納言絵巻は出光美術館所蔵でしばらく展示されていなかった。東博のやまと絵展で第Ⅰ期のみの展示であり、人の多さにじっくり見ることはできなかった。来年以降に出光美での展示が必ずあるだろう。その予行演習的な見かたであった。ただ、プライスコレクションを入手した出光美術館だけに、様々な企画が考えられる。ベストな企画展での再会を待ちたい。

2023年国宝の新指定では通潤橋が土木構造物としては初めて対象となった。1854年に架けられた橋なので江戸時代のものである。日本独自の技術で実現した最初の噴水管(逆サイフォン)の橋であることが評価されたのだろう。御物に続き、国宝指定の対象が一段と増えた。東博でのお披露目はもちろん出来ないので、現地へ行って観たい。

さて、来年は浄土宗開宗850年ということで、東博と京博、続けて再来年に九博での巡回展を企画している。天台宗で実施した規模と同じで楽しみな特別展だ。辰年の年、つまり12年に1回の御開帳のある六波羅蜜寺の本尊・十一面観音菩薩立像は秋ごろに公開があるはずで、これは見逃せない国宝である。奈良博では春に神護寺両界曼荼羅修復完成と空海生誕1250年を合わせた展開は仏教美術の殿堂にふさわしい内容となりそうだ。大河ドラマ源氏物語ということで、徳川美術館の絵巻は各地へ飛び回りそう。五島美術館も春秋の特別公開で集客できる企画をぶつけてくるだろう。あと、関連の寺院では石山寺の国宝がなかなかお目にかかれないので、なんとか一挙公開を企画してほしい。

コロナが第5類となったが、この3年は他館との交渉(とくに海外)がしづらく、美術や博物館での展示会企画を立案・実施に大きなハードルがあった。2023年~25年までは空白の仕込み時期あたりそうで、内容的には少しものたりない端境期になりそうだ。そうした中でも、自館が所有するものを中心によい企画を実施してほしい。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。