国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

木造六観音菩薩像、木造地蔵菩薩立 大報恩寺

2018年秋に東京国立博物館で行われた「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」にも出品されていた肥後定慶作・木造六観音菩薩像(6軀)、木造地蔵菩薩立(1軀)と国宝附として六観音像内納入経を一括で国宝指定となる。

大報恩寺の霊宝殿には、国宝指定を受ける仏像の他にも、千手観音立像や木造十大弟子立像(10躯)などを保管しており、鎌倉期の仏像の宝庫となっている。2018年の東博での展示会では快慶作に見とれた後、木造六観音菩薩像がそれぞれ単体で360度鑑賞できる展示となっていたことで大興奮したことを覚えている。

コロナ禍で国宝の本堂もしばらく見ていないので再訪したい。

多賀城碑 文化庁

昨年5月に「東日本大震災復興祈念悠久の絆奈良・東北のみほとけ展」を見に東北歴史博物館へ初めて行った。博物館は駅から最初に見える建物でかなりの近さ。周りは公園となっていて、自然豊かな環境であった。時間が余りなかったこともあり、散策することはなかったが、博物館での展示内容次第ではまた行きたい場所候補であった。

それが、今回の答申で多賀城碑が国宝指定となる。

www.thm.pref.miyagi.jp

仙台駅から非常に行きやすい場所にあり、博物館の常設もかなり見ごたえのある内容となっていた。国宝指定を受けた暁にはぜひとも見に行きたい。

和漢朗詠集 (雲紙) 皇居三の丸尚蔵館収蔵

皇居三の丸尚蔵館収蔵館ではリニューアルオープンを記念した展示会を4期に分けて開催している。その3期目が開催中だが、そこで出品されている和漢朗詠集 (雲紙)が重要文化財指定とともに国宝の指定となる答申がでた。

 

shozokan.nich.go.jp

和漢朗詠集藤原道長の娘威子入内の際の引き出物の屏風絵に添える歌として撰集された。こちらも光の君へ関連の文化財である。三の丸尚蔵館収蔵のものは筆者が源兼行と考えられ、当時第一の手書きに任せた逸品である。紙は右下と左上に雲が浮かぶような意匠で、雲紙としては現存最古のものである。

国宝指定前の最後のタイミングとなっている。

金峯山経塚出土紺紙金字経 金峯山寺、金峯神社

3月15日、文化審議会が6件の美術工芸品を国宝に登録することを文部科学大臣に答申した。

www.bunka.go.jp

官報に告示されて初めて指定となる。その6件を見ていきたい。(また、観たい国宝が増える)

まずはタイムリーな文化財金峯山寺金峯神社で見つかった金峯山経塚出土紺紙金字経は藤原道長・師通自筆の経典である。NHK歴史大河ドラマの光の君への中で描かれるかもしれない文化財である。

すでに大和国金峯山経塚出土品が国宝に指定されていることを勘案すると順当な国宝指定である。金峯山経塚出土紺紙金字経だが、過去のいきさつから同じ名称で2件の国宝となっている。1件目は重要文化財として考古資料に分類されていたものを書跡・典籍の部に移管した上で、国宝指定したもの(金峯神社所蔵)。2件目は近年になって見つかり、重要文化財の指定を受けたもの(金峯山寺所蔵)となっている。

tsumugu.yomiuri.co.jp

いまは紡ぐプロジェクト2024年度修理助成対象となっている。2026年度にも修理を終えて公開できるとのことで、2年後が待ち遠しい。

太刀 銘正恒 文化庁

京都のイメージは平安時代の雅な雰囲気で、京博の展示でも煌びやかなものの展示がよくある。今回も円山応挙の企画展示があり、目の保養になった。東博で開催されたやまと絵の豪華さをぜひ京博視点で企画してほしい。

さて、国宝は備前・備中・備後の名刀の企画で出品が1点あった。吉備地方の刀剣を集めて展示していたが、その多くが鎌倉時代に作られた太刀であった。文化庁所蔵(保管は京博)の正恒は太刀で長さ約75センチメートルと長尺であることに加え、鍛えと刃文が正恒の典型ということで国宝の指定を受けている。太刀は長さがある分、扱いにくいため摺り上げて短くされたものをよく見る。この企画展でも何点かあったが概ね太刀としてそのまま受け継いだものが多かった。個人的には短刀の愛らしさが好きなのだが、鎌倉時代の益荒男が身に着けたものを揃って見るのも悪くなかった。

金銅藤原道長経筒 金峯山経塚出土 金峯神社

京博では新春の企画展の後半戦が始まっていた。毎年恒例となりつつある雛人形の展示は旧家からの寄贈品が並ぶ雅な空間となっている。

3階で開催されている平安時代人の祈り―経塚と経筒―では展示替えが行われ、新たな国宝が展示されていた。金銅藤原道長経筒はNHK大河ドラマ・光の君への中心人物である。その藤原道長金峯神社へ納めた経筒を展示していた。御堂関白日記に見る筆まめ男・道長が栄華を極める足掛かりを感謝するため納経した。その経典を納めた筒が見つかり、日記と一致したことから貴重な文化財として国宝となった。NHKでもこの国宝が小道具として再現されるかもしれないので、しっかりと目に焼き付けてドラマ鑑賞を楽しむ。

観音堂 孝恩寺

孝恩寺は大阪府泉南貝塚市ある。水間鉄道に乗って、終着駅の水間観音駅を降りて歩いてニ十分ぐらい行った住宅街にある。

道中、駅名にもなる水間寺を横切る。天台宗の別格本山の地位が示す通り、かなり立派なお堂や三重塔のある格式高いお寺である。そこからさらに歩き、住宅街の路地に入ると孝恩寺がある。ちょうど川沿いの崖の上に作られたお寺で、いまは廃れているが海運の見通しが非常に良い立地である。

入り口を入るとすぐに見えるのが国宝の観音堂。浄土宗であるので、本尊は阿弥陀如来なのだが、観音堂という昔からの呼び名で通っている。そもそもこのお堂は観音寺の本堂であったのが名の由来で廃寺となったため、孝恩寺と統合されて現在に至っている。

この観音堂は別名が木積の釘無堂と呼ばれ、鎌倉時代密教建築様式で作られている。ただ、鎌倉期の金属は貴重品なので、釘を使わずに組んで建てられるのがほとんど。敢えて別名にする必要はなかったはずなので、近世になって命名されたのだろう。

国宝建築物の観音堂は普段から見ることはできる。ただ、訪れるなら春と秋に開催している宝物殿の特別公開に合わせて行くのがお勧めである。宝物殿内には重要文化財に指定されている仏像19体が安置されており、この数の重文仏像を所蔵している寺院は大阪府下では数寺院しかない。どれも美しいフォルムの仏像ではあるが、本尊であった阿弥陀三尊以外は彩色がほぼ落ちている。これは経年劣化もさることながら、火災などで焼けない様に川に沈めて難を逃れたことも影響しているそうで、火災や戦災が文化財を痛める悲しさを伝えている。国宝と共に見ておいて損はない。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。