国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

石山寺 本堂

駅から石山寺までの道中、新緑の季節も終盤となり琵琶湖を眺めながら綺麗に咲いたあじさいを愛でながら門前まで楽しく歩いた。梅雨の中休み、石山寺では特別な御開帳があった。

33年に1度、もしくは天皇即位の翌年に、天皇からの勅使が扉を開封した時のみ観ることができる勅封秘仏御本尊・如意輪観世音菩薩の御開帳が行われていた。6月末までの予定であったが、コロナの影響で8月10日まで延長。国宝の本堂内に鎮座されている菩薩は滅多に見ることができない貴重な機会なので観に行くことにした。

境内に入り、塔頭寺院を左右に見ながら、チケット売り場へ。セット券を購入すると疫病退散祈念の護符をもらう。行きなれた場所のため、すぐさま本堂に向かう。普段は閉じられている正面のご本尊が全開!!中には二臂如意輪観世音菩薩坐像が鎮座していた。大きさは3メートルを超え、興福寺・南円堂の不空羂索観世音菩薩像を思い起こす迫力ある仏像であった。大きさもさることながら、仏像の着色がある程度ではあるが残っていて、往年の鮮やかさを想像させる。勅封仏像であるためか、国宝指定されていないが、間違いなく仏像のなかでも秀逸の彫像である。国宝の本堂に収められるべくして、鎮座する仏像である。

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天橋立図 雪舟

火曜日20時、BS日テレで放送中のぶらぶら美術・博物館で4週にわたりコロナ対応の著名美術評論家が選ぶ10選を放送。第3段は「死ぬまでに見たい日本絵画10選!山下裕二×仏画の最高峰から琳派若冲、隠し玉まで」と題して、日本画をピックアップ。この紹介で国宝が何点かあった。

山下裕二が紹介する作品であることから、雪舟は間違いなく入選。その中で選んだのが天橋立図である。洛中洛外図など屏風絵などで絵が描かれる鳥観図は実物と町の文化のいいとこどりしたイリュージョンな作品に仕上がっている。また、伊能忠敬の地図や、各地域の領地を実測したものなどは本物志向で、あくまでも資料的要素が強い。その中間にあたるのが天橋立図で、本物に近いところ、水墨画家としての芸術性を併せ持った作品となっている。山下氏が発見したという、折り重なった部分の朱色が対面に付いた話などもあり、山下節全開の紹介であった。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/suibokuga/item01.html

厳島神社

広島県の宮島といえば大鳥居が海に浮かんでいる風景が一番最初に思い浮かんでくる。ところが、令和の大改修に入ったため、大鳥居は全体を覆って工事されている。最近、覆っている布をシースルーにしたとニュースになったが、薄っすらと全景が分かるぐらいで、配慮したことを知らなければ見過ごしかねない。

国宝は大鳥居の奥にある社殿。朱入りに塗られた立派な社殿は、満潮時には海に浮かんでいるように見える構造となっている。そのため、台風と大潮が重なった時などは、水が侵食して社殿にも影響が出る。ただ、建築構造上、大潮などでの被害を最小限にする工夫はいたるところにされているため、倒壊などの被害はない。

全国的にも観光業は3月下旬以降、需要がなくなった。宮島も普段は多くの観光客でにぎわい、ケーブルカーが時間指定になるぐらい大盛況だったのが、一気にいなくなってしまった。広島観光は原爆ドームもあり、欧米系の観光客が多かったことを思うと、当分の間は訪日外国人の需要は望めない。今まで人出が多くて敬遠していた地域もゆっくり見ることができるのでありがたい。

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雪松図屏風 円山応挙

白色は塗るためにある絵具である。金色は高価なので絵画ではピンポイントで使うことが多い。縁取りは墨でするのが水墨画など、既成概念をすべて壊してしまう作品が丸山応挙の雪松図屏風である。

松の木に積もった雪は下地の白い紙で色はなにも塗られておらず、松のバックにある風景は大量の金粉により描いている。墨は松の木の幹や葉を描き、力強さが表現されている。三井記念美術館で新春に公開される作品で、冬にふさわしい傑作となっている。

www.mitsui-museum.jp

紅白梅図屏風 尾形光琳

尾形光琳俵屋宗達をリスペクトしていたのは間違いない。風神雷神図屏風の模写を観れば明らかである。琳派の名前が光琳から取られてはいるものの、明治までの宗達の評価が低かった(光琳が高過ぎた)ことによるものであり、宗達あっての光琳の作風が誕生したことは疑いようがない。

さて、宗達風神雷神図屏風へのアンサー作品はなにだったかと考えると紅白梅図屏風だと思う。風神雷神という神をモチーフにした宗達に対して、春に咲く若梅と老梅を対比し、真ん中に意匠的なデザインを配した川を描くことで、神様にはない時間の経過をも絵に取り込んだ。宗教的な題材では無限の時間を描き、風俗的な題材は時代か時間を描く。北斎の富岳三十六景も一瞬の時間を切り取った中に、あり得ない幾何学的なデザインを埋め込むことで人々を魅了しており、紅白梅図屏風にも共通した部分が多い。熱海のMAO美術館では正月明けに展示されることが多く、写真撮影もOKなので気軽に観に行ける国宝である。

www.moaart.or.jp

風神雷神図屏風 俵屋宗達

屏風絵史上、最も有名な作品は俵屋宗達風神雷神図屏風だろう。

風神と雷神の2人だけの空間に、浮遊感や対立構造、ユーモラスな表情までいろいろと詰め込んだ。空間美と神物描写の絶妙さから尾形光琳や鈴木其一が題材に選び、描いた傑作の原点である。

宗達自身、謎の多い人生で知られていない部分も多い。そのためか、明治時代には光琳よりも人気が低く、海外へ流出した作品が多くある。大正2年に開催された俵屋宗達記念会で一気にブレイクし、不動の人気となった。風神雷神図屏風は頻繁に展示されるものではないので、展示機会を見つけて何度も見たい作品である。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/kinsei/item10.html

洛中洛外図屏風 岩佐又兵衛

様々な鳥観図があるが、描かれている人々の一人一人が最も生き生きして描いているのは岩佐又兵衛の作品である。

いつの時代も首都である都にはあこがれを持つ。政治的な中心であるだけでなく、文化の発信拠点として人々を引き付ける。いまでこそ、交通インフラが発達したため、全国どこからでも日帰りで東京へ行くことができる。しかし、江戸時代は気が向いたらすぐに行けない。大名であってもそうで、京の都の華やかさを肌で感じることはなかなか機会がない。そこで、絵にすること、今ならば観光マップを入手することで想像での都体験が可能になる。景色を描いた単なる鳥観図では街中の人々を描くことでより、現実感が増す。今ならばVRといったところだろう。

www.emuseum.jp

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。