国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【藤田美】曜変天目茶碗

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奈良博 藤田美術館

現在改装中で2022年のリニューアルオープンを目指す藤田美術館の至宝を集めた展示会が奈良国立博物館で開催されている。リニューアルに際して、その費用をねん出するために所蔵のアジアの美術品を売りに出し、300億円もの資金を得たのは記憶に新しい。

なので、今回の展示は日本美術、とくに仏教関連が中心で国宝9点すべてが展示される大型展示会。これまでの蔵を改装しただけの藤田美術館では、展示が難しかった十六羅漢図や仏像彩画円柱8本の一度にすべての展示をするなど見どころ満載となっている。

その中で一番人気は世界に3つしかないとされている曜変天目茶碗。奈良博では入口すぐの部屋の中心に特別な空間を作って展示している。行列必死の茶碗に対して万全の体制を取るべく、広い展示スペース内に部屋を作り、入口出口を一か所にして導線を確保。曜変天目を見るためだけに並ばなければならない。そして、現れた茶碗は漆黒をベースに光によって蒼く輝く天目茶碗だ。

曜変は斑点の外側への蒼さが広がりが印象的であった。斑点が惑星で、その周りに宇宙があるように観える。しかし、茶碗を照らす光源がショーケースの一番上の一か所からしかないため、どの角度から見ても茶碗の輝きが一緒であった。改装前最後の藤田美術館で開催された展示会「ザ・コレクション」では古い蔵の暗さにありながら少しの光で輝きが変わっていたり、解説員の説明の時はLEDライトで光を当てて輝きの違いを観ることができた。展示会場が大きく、安全面から暗くするのが難しい空間なのでしかたないが、MIHOでも感じた光らせ方を何パターン化ほしかった。

藤田美所有の曜変天目は円形の傷となる茶筅の跡がよく目立っており、使用感が半端なくある。選ばれた人が茶の湯を楽しんだのだろうが、その感想があればぜひ知りたい。

伊予国奈良原山経塚出土品

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玉川近代美術館

今治市の駅からバスで揺られること数十分。四国山脈を目指して南下するにつれて、市街地から田畑へ変わり始めた頃に玉川近代美術館の近くのバス停となり下車する。

本当に美術館があるのかと思うほどのどかな場所だが、この場に似つかわしくない近代的な建物が奥に見え隠れしていた。その一つが玉川近代美術館で、主に絵画と像を展示している。マティスやルオーなど近代の西洋画が展示されており、2階の展示室が吹き抜けになっていたり、なにげに像が展示されているおしゃれな近代美術館である。

そんな近代美術館の1階の展示スペースすぐの正面に個室がある。そのなかに国宝の出土品が収められている。一般的な出土品の展示の場合、仏像や古代の関連物に囲まれているものが多いのだが、近代絵画のなかに出土品を展示しているのはここぐらいのものだろう。銅塔にはうっすら梵字で書かれた意匠があるほか、古銭、扇なども展示されている。

国宝の出土品は歴史的価値はあっても、近代美術とは程遠いものばかり。常設ではなく春と秋に特別公開のみは残念だが、玉川近代美術館の雰囲気ではそれが正解。お遍路さんのついでに寄りたい癒しの場所である。

一遍聖絵

時宗を起した一遍上人の七百年遠忌記念の展覧会が京都国立博物館で開催している。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/special/index.html

宗教家の遠忌にちなんだ展覧会はこれまでも数多く開かれている。というよりも遠忌に合せて企画が進んでいるので、この時期にしか見ることができない貴重な寺宝や陳列の仕方が楽しめる。

今回の見どころは国宝の一遍聖絵の全12巻がこの会期中にすべて展示される。7巻だけが東博の所有で、そのほかは清浄光寺所有。簡単に実現しそうな組み合わせだが、絵巻物が長尺なので展示スペースのある大きな博物館でしか全部見せますができない。なので、今回の一挙公開を見逃すとそのチャンスはそうそう訪れないだろう。

【一遍展】

レア ★☆☆

観たい ★☆☆

コラボ ★★★

類聚古集

元号制定による万葉集ブームの流れに乗ってほしい国宝がある。

龍谷大学が所蔵している類聚古集だ。万葉集長歌・短歌・旋頭歌に分け、題材により分類・配列した解説で、写本として唯一現存しているものである。伏見天皇の宸筆とされる花押もあり、国宝にふさわしい。

さて、同書の現物はなかなかお目にかかれない国宝なのだが、デジタルによる画像データベース化されているので見ることは可能だ。しかし、本物が観たい。そのチャンスが今年の夏の龍谷大学380周年の記念展示会かもしれない。大学所蔵品は節目での陳列がままある。デジタル化を終えて、新元号となるので展示会への出品のタイミングとしては申し分ない。万葉集関連として展示情報をチェックしたい。

万葉集

元号が発表され、その元ネタが万葉集から採用された。万葉集の中で国宝指定のものは3つ存在する。

もっとも完品に近いのが東博所有の元暦校本20冊。そして、残巻ではあるが京博の巻第九残巻(藍紙本)、前田育徳会所有の第三、第六巻残巻(金沢万葉)の3つが国宝に指定されている。いずれも常設では展示されていないものの、企画展などでお目見えするレアな国宝。

国宝ではないものの、断簡されて各所で保管されている桂本と天治本の計5つを「五大万葉集」と呼ぶ。いずれも平安期のものだ。

国宝の3つは展示の都合などがあるが、旬なうちに展示しそうだ。東博なら20冊のうち、出典の書のみを展示しそう。また京博のものは夏に横浜美術館で展示予定。前田育徳会のものは石川県立美術館に展示するだろうが、開館60周年記念展あたりでの展示かもしれない。そのほかで、国宝ではない断簡の部類はゴールデンウィークの緊急特別企画で各地の所蔵者たちがこぞって展示するだろう。ネットでの最新の情報収取が欠かせない1か月間になる。

【龍光院展】密庵咸傑墨蹟

密庵咸傑は宋の時代の禅僧。その墨跡で唯一現存しているものが龍光院所有のモノである。密庵咸傑の系譜から著名な墨跡の著者が数多く誕生していて、虚堂智愚、蘭渓道隆、無準師範、無学祖元、清拙正澄、日本の宗峰妙超・一休宗純夢窓疎石、雪村友梅など枚挙の暇がない。

墨跡界のレジェンドであることに加えて、千利休の添状もあることが箔をつけている。茶会の床の間に飾る最高の品である。国宝の龍光院の書院ないには茶室「密庵」があり、この墨跡を飾るためだけの密庵床が存在する。そのくらい貴重な重要なものとして扱われている。

展示会では他の展示物同様に飾られていることと、曜変天目が見た目からして注目を集めるので、墨跡の貴重性が分かりにくい。また、MIHOミュージアムの展示には解説が無いに等しく、事前予習なしに行くと見落としてしまう。この機会を逃すといつ展示されるか分からない逸品として見ておきたい。

【龍光院】曜変天目

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一昨年の国宝展では第2期の目玉であった龍光院所有の曜変天目茶碗がMIHOミュージアムで早くも再登場。行列必死の展示会へ行く。開始して2日間目、MIHOミュージアムは桜が絶景のためその前で、国宝展並みの来客はなかったが、それでも開場前に100名を超える人が来ていた。おそらく桜の時期は人混みと化すことだろう。

さて、曜変天目を国宝展で初めて見た時は特別な照明まで準備しての展示だった。

http://kokuhou.hatenablog.com/entry/2017/10/23/080000

今回は普通の照明で、真上からの照射型なので、器の中は明るく見やすかった。茶碗として小さい部類だが、器の中で青く光る輝きは小宇宙を想像させるだけの大きさを感じる演出となった。斑点は小さな円形が、それとなく規則性を有して位置しているためか、所々にある斑点群が肉球に見えてくる。

器自体が漆黒で、今回の照明は内面のみに焦点を当てているため、側面部分は真っ黒にしか見えない。巻物の巻き直しての展示があるのならば、器の照射直しがあっても面白いかもしれない。

列がそれほど長蛇になることがなかったので数回並んで見たが、器の中には茶筅による回転らしき傷があり、この器で茶を一服した人物がいる。現代人には展示会があり、見るだけなら経験できるが、使用するほぼ不可能なのだろう。緊張して落としでもしたら大変なことになる。

さて、曜変天目の国宝指定は3点あり、そのすべてが今年見ることができる。静嘉堂文庫美術館藤田美術館所有は奈良博で展示される。そして、もう一つの曜変天目とも言われる重要文化財でMIHOミュージアム所有の天目茶碗は、今回の展示会に合わせて常設展示会場にて公開されている。見ると国宝3点は光によって青く輝くのに対して、MIHOのものは虹色に光る。ある意味でMIHOの方が貴重なのかもしれないが、器が放つ輝きというよりか、茶器の釉による光の屈折が虹色へと変化させているように見える。曜変の怪しさが全くないので別物として、虹彩天目とめでたい命名をつけたいぐらいだ。2017年に続き、曜変天目イヤーの幕開けに相応しい展示会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。