今治市の駅からバスで揺られること数十分。四国山脈を目指して南下するにつれて、市街地から田畑へ変わり始めた頃に玉川近代美術館の近くのバス停となり下車する。
本当に美術館があるのかと思うほどのどかな場所だが、この場に似つかわしくない近代的な建物が奥に見え隠れしていた。その一つが玉川近代美術館で、主に絵画と像を展示している。マティスやルオーなど近代の西洋画が展示されており、2階の展示室が吹き抜けになっていたり、なにげに像が展示されているおしゃれな近代美術館である。
そんな近代美術館の1階の展示スペースすぐの正面に個室がある。そのなかに国宝の出土品が収められている。一般的な出土品の展示の場合、仏像や古代の関連物に囲まれているものが多いのだが、近代絵画のなかに出土品を展示しているのはここぐらいのものだろう。銅塔にはうっすら梵字で書かれた意匠があるほか、古銭、扇なども展示されている。
国宝の出土品は歴史的価値はあっても、近代美術とは程遠いものばかり。常設ではなく春と秋に特別公開のみは残念だが、玉川近代美術館の雰囲気ではそれが正解。お遍路さんのついでに寄りたい癒しの場所である。