4月13日から京都国立博物館で始まる雪舟伝説では、雪舟が描く国宝6点すべて展示される。雪舟の慧可断碑図も展示される予定だが、村上隆が描いたら写真のようになった。
雪舟作品は達磨大師に対して慧可が弟子志願に掛ける信念の証として腕を切り落す場面を俯瞰で描いている。達磨大師は無表情でチラ見、慧可の態度は「腕切ったけどなにか」と慌てていない。大変なことをしているが静寂を感じる作品である。
一方で村上隆は腕を切り落したことのみを描いている。もしかしたら達磨大師の視点から見る慧可の状況で、腕の切り口らしき部分から色とりどりの液体が流れている。対して差し出す腕は綺麗な状況で、信念を表しているように見える。ここに慧可断碑という題があるため、雪舟の作品を想起させるが、なかったら単なる現代アートとして片づけて見逃してしまう作品である。
背景を銀箔にしているのは水墨画でよく見る、水をたっぷり沁み込ませた薄墨で一旦紙全体を塗ることで背景を作る手法のトレースに思える。経年することで銀が劣化して黒ずんできた時を想像するとまた新しい作品に生まれ変わる。日本の未完成の美を楽しめる作品にもなっている。個人的に創作するとしたら、上部の赤い物体が冷静な慧可を表現するならスカイブルーぐらいの青で一点の曇りもない気持ちを表せたらと感じた。