岡山県出身者には多士済々の文人墨客がいる。その中でも際立っているふたりを取り上げた展示会が岡山県立美術館で行われた。ひとりは雪舟、もう一人は浦上玉堂。浦上玉堂については息子の春琴・秋琴作品も多く展示していたので浦上家を取り上げたと言ってもよい。
県美を全面的に使用した展示会は第1会場が主に雪舟、第2会場が浦上家の作品展示で最後のコーナーだけ県美所蔵品を展示していた。
コロナ禍ということで空いていると思っていたが、それぞれの作品を見るためにノロノロ歩きの列が出来るぐらいだった。日時指定などはなく、久々に列へ並んでの見物だったので新鮮な感覚だった。
さて、雪舟の作品が国宝には6点あり、そのうち5点が展開に出品。後期に行ったため秋冬山水図は見ることができなかったが、国宝展以来の雪舟の国宝一気見だったので興奮した。
なかでも慧可断臂図は約210点が陳列された京博の国宝展でもメインビジュアルのひとつになるぐらいインパクトのある水墨画である。とくに現物の大きさは書籍で見るそれに比べ物にならないぐらい、強い印象を与える。人物描写は等身大より若干小さいが修行する達磨大師の達観した表情と、その信念に心打たれて弟子入り志願する慧可が腕を切り落して訪れる瞬間を悲壮感なく描き切っている。雪舟独特の岩や、服装に薄墨を使うなど”らしさ”が際立つ作品である。