きもの展では実物の着物のほかに、きもの(人物も含む)が描かれているものも展示されている。
国宝では前期の最初の週のみ、大和文華館所蔵の婦女遊楽図屛風 (松浦屏風)を展示。こちらは、大和文華館にて鑑賞した。そして、後半は狩野秀頼筆の高雄観楓図屛風が展示されていた。日本では紅葉を楽しむ風習もあり、着物姿で観賞する風景が描かれた作品である。 花見といえば春の桜で派手さはこちらに軍配が上がるが、秋の紅葉狩りも風流で着物の柄を楽しむにはちょうど良い。狩野秀頼が描いた屏風は当時の風俗を表す最も早いもののひとつで、酒を飲みながらボードゲームを楽しんだり、お囃子に合わせて踊ったりといつの時代も変わらない風景が描かれている。
きもの展では着物に関する絵が展示されており、その中で一度は見てみたかった見返り美人図があった。菱田師宣の代表作にして、記念切手を世に広めた功労絵?だ。振り返った女性の何気ない姿勢を描いたもので、顔は半分ぐらいしか見えない。見えそうで見えない部分が好奇心をくすぐると共に、意識せずと目に入る着物の美しい柄が女性の貴賓の高さを表し、想像を膨らませる効果を演出している。見える部分で見えない部分のイメージを補う、心理をついた名品となっている。
それにしても、北斎や広重などもそうだが浮世絵師の文化財指定の数が少ないように思うのは、一般大衆向けの大量生産品の評価が低い現れなのだろうか。せめて、肉筆画は御用絵師や宗教画家達と同等に扱ってもよいと思う。