京博の親鸞展でメイン展示となるのが教行信証(坂東本・西本願寺本・高田本)が3本勢ぞろい。浄土真宗の根本聖典となるものだけに、なかなか見ることができない。それに加えて各団体から借り受けて同時に見せるのは史上初となる。
教行信証の正式名称は顕浄土真実教行証文類。教・行・信・証・真仏土・化身土の六巻からなる。親鸞が晩年まで遂行しつづけ、教えのすべてが書かれたものである。これを見るだけでも、親鸞がいかに信仰と向き合ったかが分かる。
さて、3つが揃うということで、展示の仕方も特別。1階の奥の部屋でここだけ柵を設けて後ろからじっくり見る人と近くで流れて見る人を分けていた。ただ、3階や2階に比べると人の入りが少なく、近くでじっくり見ることが出来た。
さて、3つの違いは以下の通り。高田本は専修寺所有で完成形を製本。坂東本は東本願寺所有で、各所で黒塗りや修正が生々しく書かれており、考えをまとめる過程が手に取るように分かる。西本願寺本はその名もずばり西本願寺所有で、完本一歩手前のものを推敲している跡がある。
国宝指定は坂東本のみだが、揃って見ると比較出来て興味深い。親鸞が生涯をかけて伝えたかったことの、思考プロセスが分かるのはとても面白い。800年近く経っても色あせず、日本最大級の門徒を抱える存在となるだけの宗教観の集大成の原本が目の前にあると思うと柵を設けて正解だが、多くの来場者はなかなか分かってもらえていないようだ。