2023年は親鸞聖人が誕生して850年の節目の年であることから親鸞展が京都国立博物館で開催されている。親鸞の教えを受け継いだ浄土真宗は各派閥に別れている。血族がトップにつく派閥や教えのみを受け継ぐ派閥など、切磋琢磨した結果、国内最大級の信者(浄土信宗では門徒と言う)を抱える宗派となった。
本展覧会には開祖の生誕祭とあって普段はお目にかかれない国宝が各派閥から出品されている。京博の特別展の導線はいつものように3階からスタート。まず、驚かす意味も込めてか光明本尊を展示。浄土真宗に関わる名僧たちが南無阿弥陀仏の文字を囲むように配置され、文字から光明が出ているインパクト大の作品。まるでアベンジャーズだ。これを見ただけで興奮度はマックス。次に快慶作の阿弥陀如来立像が隅っこに展示。総本山系の特別展では仏像がメインになることが多いが、仏像はこれだけと一点豪華。見仏マニアを排除した潔い陳列だ。
この2作品の先制パンチでノックアウト寸前となった。そこに3階の第一室のメイン展示物である国宝の親鸞の自筆、観無量寿経註が現れる。親鸞の文字は決して美しいとは言い難い個性的な書き方で、日蓮聖人とともにこの人が書いたと分かるオリジナリティーあふれるものとなっている。ともに延暦寺で学んだはずで、かなり尖った僧侶だったことが文字からも分かる。
この経典の特徴は親鸞自身が経典の欄外に解説や注意書きをびっしりと埋め尽くしている点だ。国宝の御堂関白記にも日記部分からはみ出して書かれている部分があったが、親鸞のものは空白が見つかららないぐらい書き込まれている。初めて士郎正宗の漫画・攻殻機動隊を見た時ぐらい情報量の多さを感じた。書かれたのが師匠・法然を慕っていた時期らしく、親鸞がどのように学んだか手に取るように分かる経典である。