最近の文化財の修繕時に新しい試みが進んでいる。古い文化財は修繕はもちろん必要となってくるのだが、その時に最新の機器を用いて調査して最適の修繕をするとともに、再現いわゆるコピー品を作ることが増えた。コピー品は、現在の劣化状態も踏まえた写しと、修繕時に得た作られた当時の素材を使って忠実に再現した品がある。
春日大社の金地螺鈿毛抜形太刀は柄や鍔などの多くの金具は金無垢に文様を彫り出し、鞘は金粉を蒔き、螺鈿で雀を追う竹林の猫を表現していた。しかし、時代と共に劣化は否めない。再現品では、黄金の輝きや抜け落ちた宝石、螺鈿を作られた当時の状態で再構成していた。眩い輝きが放たれ、猫のデザインも生き生きしているように見えた。
再現品の作成過程では当時の技術を知ることができ、その再現したものを全国で展示できるメリットがある。正倉院宝物のように展示期間が限られていて、頻度もさほど多くないので再現させたものは、各地の展示会への出張など活用方法が多い。
一方で、写しは綴プロジェクトにみるように、常設しにくい屏風絵などを忠実に再現し、写しを常設展示することでいつでも文化財を見ることが出来る場を提供できている。複製技術の革新を踏まえた文化財の活用の場が広がっている。その中で、本物と再現物を展示する試みはとても分かりやすい。偽物を本物と言うのはよくないが、偽物と分かった上で、オマージュ作品として原本にリスペクトを捧げたものであることが分かれば、大いに企画出品して、コラボ展示を実現してほしい。