国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【博覧】飛雲閣 西本願寺

龍谷ミュージアムで開催中の博覧。お題だけ聞いても興味が沸きにくい展示会の企画だ。ただ、この展示会観覧でオプションツアーが申し込めたので、見に行くこととなった。

博覧は明治5年に国内初の本格的な博覧会が京都であった記録を紹介する企画展である。博覧会を実施した資料がきっちりと残っているだけではなく、当時としては貴重な記録写真も数多く撮られており、紹介されていた。また、その時に展示されていた品物に加えて、その時預かったことを示す証文も展示されており、展示物と共に大切に保管され続けたことが分かった。この博覧会の会場が西本願寺で、前年にはプレ博覧会も開催されたそう。当時はまだ列車も通っておらず、人力でかき集めた品々と思うと当時の主催者の苦労が目に浮かぶ。

さて、博覧展を楽しんで、オプショナルツアーへ突入。真向かいにある当時の展示会場となった西本願寺書院へと移動した。

以前、毎月16日に開催している「Shinran's Day」で見学した書院。

西本願寺 書院 - 国宝を観る (hatenablog.com)

その時は、僧侶の方の説明で、いろいろなお話しを聞けた。

今回は龍谷ミュージアムの方が説明。美術史的な視点からの説明だった。当時の博覧会の会場が書院であった。その証拠として、展示会場で大きくタペストリーとなっていた当時の記録写真と同じ構図の部屋がそこかしこにあった。ミュージアムではなんとなく見ていた写真が一気にシンクロできた。また、展示するために様々な敷居が作られていたが、その柱の先は文化財を気づ付けない様に布が巻かれていたことが写真に残っていた。解説がないとそこまで気づかない。寺側からの強い要望だったそうだが、メディアが撮影のために文化財を傷付けたニュースが出るくらいモラルが低下しているので、文化財保護のイロハを学ぶためにも展示会の隅々まで見てほしい。

その他でためになったのが、鴻の間での解説。狩野派が描く絵(障壁画)は、位によって通される間が変わるため、テーマが変わる。玄関の虎に見る鳥獣が低く、花鳥⇒人物⇒山水の順に偉くなる。なので、見ることは出来なかったが黒書院は山水画が描かれているとのこと。色々な寺院を訪れているが、単体での絵の素晴らしさを堪能することはあっても、テーマで地位の高さを見分けることをしていなかったので、今後は意識的に見ていきたい。あと、戦後すぐに文化庁から文化財保護のために剥落防止剤を使うよう指示があり、問題も指摘されていたが使った慣れの果ても解説していた。剥落は防げたが、絵が全く見えなくなっており、保全するにも最新の注意が必要ということを改めて学んだ。

一通り書院を見学した後はお目当ての飛雲閣へ。修繕工事を終えたばかり。真新しい姿に生まれ変わっていた。ただ、当日は雨予報のため、雨戸がすべて閉められており中は全く見えず。雨戸も真新しいかったのが印象的だった。

増築を重ねたような造りの飛雲閣は、全体的に柱が細く障子の多いことから、空に浮かぶ雲のようだということで名付けられた。雲のような自由を建物から感じられるのは稀で、居住空間ではないからこそ出来た建物である。目の前にある池に船を浮かべ、建屋には船から直接上がれる仕掛けがあったり、三十六歌仙の絵を配した部屋があったり遊び心満載となっている。書院に能舞台があるなど、遊興のための施設が多くある。江戸時代は今のような高級ホテルがなく、高貴な人を宿泊・接待させる場所提供のニーズが満たせていなかった。そこで、本能寺で宿泊した信長のようにお寺はニーズを満たしていたかもしれない。宗教は時の権力者と持ちつ持たれつの関係が、いつの時代にもあっただろう。その名残を楽しむことが出来た。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。