今回の展示会で一番派手な作品が蝶牡丹螺鈿蒔絵手箱である。
国宝の箱の中でも屈指の煌びやかさで、細工の凝り様はなかなかのもの。全面が黒漆にも関わらずびっしりと蝶や牡丹の図柄を細工し、部分部分で螺鈿を施すことでゴージャスな箱に仕上がっている。
茶道具に関係がなさそうに見えるが、江戸時代を代表する茶人・松平不昧の筆で「時代手箱」の墨書があることから、蒐集に至ったのだろう。以前に見た時もそうだが、表面に剥がれかけている個所があるなど劣化が目に付くので、修繕を早めにして気兼ねなく見る体制を作ってほしい。