国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

観音堂 永保寺

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歴代最高気温ランキングトップテンに入る岐阜県多治見市。2000年代に入り、最高気温ランキングは目まぐるしく変わり、浜松が現在ランキングは一位。それまで一位だった熊谷では日本一暑い町として売り出すに至っている。

多治見市も暑い町として売り出しているが、元来は美濃焼の産地として有名である。東濃は日本最大の陶磁生産拠点で、志野焼織部焼など国宝・重文が誕生した地でもある。2021年にはアニメーション「やくならマグカップも」が放送され、焼き物にも注目を集めるよう前半がアニメ、後半が出演声優による多治見市ロケという奇抜な構成となっている。

暑い多治見には国宝建築物がある。永保寺の観音堂と開山堂で、多治見駅からは北へ数キロとなる。国道19号線から山へ登る道に入った山の中に寺院がある。標識がなければ周りから全く見えず隠れ家といってもよい。

目印となる大きな石の標識が見えると少し開けた場所となる。そこからJR中央線の踏切が見え、これがなければとても静かな場所である。踏切を超えると市松模様に石が置かれた庭園を右手に、左手には続芳院があり、ようやく入り口が見える。入り口からすぐ下り坂で、眼下に伽藍の建物が見える。

とぼとぼと下ると、正面に大きな檜皮葺きの屋根が見える。この建物が観音堂でちょうど真裏とあたる。なので建物内にいる観音様が見ているであろう池泉式庭園を俯角で見ることになる。池泉式庭園は水平レベルで見ることはあっても上から見るためには高い建物からが多く、ほかの寺院ではほとんどない演出につながっている。

下りきった先は池を中心に観音堂。山を背にした方丈がある。方丈は新しく2003年に火災で焼失し、庫裏が2007年、本堂が2011年に再建されたばかりだ。古い建物だった頃に来てみたかった。

観音堂は池に囲まれてはいるものの、橋などで正面まであるいて行くことができる。建物形式は入母屋造で、軒反りが強い屋根が特徴となっている。この反り返りが鎌倉時代にはやった禅宗様の雰囲気を醸し出している。

観音堂の正面には太鼓橋のような丸みを帯びた無際橋があり、そこから参拝ができる。また、お堂の左側は山肌がそのままあり、滝が流れたり、立てた岩や仏像を配置して梵音巌を造っている。それらすべてがお堂と一体となって浄土極楽をこの世に再現している。観音の導きが国の名勝庭園と登録されるのも当然なぐらい、自然を生かした造りとなっている。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。