国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

向源寺 十一面観音立像

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琵琶湖の湖東、長浜を中心とした地域は知られざる観音菩薩が各所に点在している。その魅力を発信していた東京・上野のアンテナ仏像館「観音ハウス」が昨年10月をもって閉館した。アンテナショップは数あれどアンテナ仏像館は聞いたことがない。滋賀でも彦根以東の魅力と聞かれて長浜の町並みと曳山は思うつくが、それ以外となると想像できなかった。それが、観音の里としてPRしたおかげで見仏マニアたちが訪れるようになった。

観音の里の中心で絶対的エースは向源寺の国宝・十一面観音立像である。高月駅を出るとすぐに寺までの道のりを示した案内板がでている。その案内に導かれて10分足らずで向源寺に着く。周りを塀で囲っている重々しい寺が多い中、開放感ある境内では檀家さんと思われる人たちが受付をしていた。受付を見ただけで地域に根差したお寺だというのが分かる。

拝観料を払って本堂から上がって、本堂横に増設された廊下を渡ると近代的な観音堂がある。仏像たちが安置される施設で自動扉が備えられているのは末寺クラスでは珍しい。見学には檀家さんと思われる人が監視のためについていて、観音様に何かあってはいけないという強い愛着が窺えた。

さて、日本全国に七体ある国宝十一面観音の中でも最も美しいとされる立像は正面から見るとほとんどの頭についている顔が見えるように作られている。腰の括れや衣装の襞などの造形美はすばらしく、観ただけで観音様を拝みたくなる出来栄えである。

堂内では360度どこからでも観ることが可能で、厨子などに入っている場合は観ることができない後ろの大笑面もじっくり観ることができる。日本一美しい彫刻かは議論の余地があるが、日本一地域に愛された彫刻であることは間違いない。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。