西国33ヶ所巡礼地の一つである粉河寺が創建1250年を迎えた。それ記念して「国宝粉河寺縁起と粉河寺の歴史」展が和歌山県立博物館で開催していた。
和歌山城の南側に近代美術館と隣接する形で建っている博物館は非常に新しい施設である。ただ、JRと南海の駅のちょうど中間にあり距離がそこそこあるため、人の入りは微妙。他の地域なら少人数が乗車できる循環バスを走らせていることが多い距離だが、それができないぐらいさびれている?のかもしれない。
和歌山は京都や奈良のような遷都された古都ではないし、神戸のようなおしゃれ感もない。ましてや大阪のような大都会もない。しかし、海運業で栄えた港町点在し、それぞれに歴史ある寺社があり、熊野古道は世界遺産指定を期に人気の観光スポットとなっている。
西国三十三ヵ所観音巡礼では那智が1番札所で、紀三井寺、そして3番札所が粉河寺となっている。粉河寺のイメージは石庭と左甚五郎の彫刻。本堂の前庭とその下の広場との高低差を利用した石組みの庭園は他で見たことがなく、立体造形物としての石柱と高低差をうまく組み合わせた芸術品だ。まるで油絵の立体的な厚塗りにより西洋画の新境地を開拓したことを彷彿とさせる庭園だが、それに続く作品を見たことがないので流行とまでには至らなかったのだろう。そして、境内のふとしたところにある看板に左甚五郎の作品がある旨が喧伝されている。本堂にある「野荒らしの虎」の彫刻がそれなのだが、迫力のない猫?のようなのっぺりとして虎で、日光で見た眠り猫とは明らかにレベルが違い過ぎる。ウィキペディアにも作品として載ってないぐらいと思って観るとちょうどよい。
さて、訪問したのは和歌山県立博物館で、粉河寺の寺宝を集めた展示会となっていた。秘仏の本尊・千手観音はもちろん公開されていない。しかし、普段公開されている本堂・裏側に安置されている千手観音立像が360度どの角度からも観える展示となっており、その眷属である二十八部衆と風神・雷神も揃って公開していた。
今展示会の主役である縁起絵巻の本物は前・後期で場面転換があるものの期間中は展示され続ける。そして、本物を元にして江戸時代に作られた写しや新解釈の掛け軸、曼荼羅図など派生絵画が出ており、粉河寺の人気が窺える品々が陳列されていた。
国立博物館で開催されてきた宗派の寺宝を集めた大展示会には幾度となく訪れ、その度に感動を覚えたが、規模は劣るもののその寺宝の質は単独寺院の寺宝としては相当レベルの高いものであった。できれば寺院内に施設を作って常設公開をしてほしい。