しまなみ海道にはもう一つ国宝がある。向上寺の三重塔である。と言っても立地と派手さ、知名度では下界にある耕三寺と平山郁夫美術館にはかなり劣っている。耕三寺は有名寺院のおいしい所と派手なものを集めたごった煮的寺院で、今ならインスタ映え寺と言ったところだ。平山郁夫は出身地に錦の御旗を建てた文字通りの美術館で、佐川美術館には劣るものの時系列的に作品が陳列されていて、平山の生涯を追うには分かりやすい造りであった。
だが、ここは国宝を観る。向上寺の三重塔のことを書かなければならない。見晴らしの良い山腹に建てられ、瀬戸内海の航行を見渡す絶好の位置となっている。信仰の建物というより、それをカモフラージュにした見晴らし台だったのかもしれない。瀬戸内で残る最も古い塔の一つで、島に三重塔があることも珍しい。ただ、塔は奈良や京都にあった場合は国宝になったかどうは微妙だ。