国宝所有点数が最も多いのは醍醐寺である。なにせ7万5000点以上!!を所有している。しかし、それらの多くを占める宋版一切経6102点と醍醐寺文書聖教 6万9378点は一括で指定を受けているので、国宝としてのカウントは2件となる。その他にも金堂などの建物や絵画、仏像、書籍など21件を保有する大寺院である。
醍醐寺といえば、名水が沸く寺院であり、豊臣秀吉が桜の花見を開いた会場になったなど逸話も多い。昨年の冬に九博で行われた醍醐寺展(そのまえ2018年秋にサントリー美術館で開催した巡回展)には国宝・重文クラスが惜しげもなく展示されていた。今回は西国三十三所ということで、関連の経典が前半に、醍醐寺文書聖教類も中盤に展示される。なにせ、7万5千点のうちの1巻ずつの展示で、他の国宝出品に比べると迫力があまり感じない。とくに宋版一切経はほぼ完品で最多の保有数という点の評価と印刷技術が確立したマイルストーン的な国宝なので、製作者たちの人間味あふれる国宝の中にあっては無機質感が半端ない。量産できる経典は僧侶の大量排出が可能になるきっかけとなり、国家仏教から大衆化を進める役割を果たした。