浄土式庭園の此岸にあたる場所にあるのが三重塔。ここには薬師如来が祀られている。
もともとは京都の一条大宮にあったものを1178年に移築した。なかには秘仏の薬師如来像を安置し、十六羅漢の障壁画が描かれている。
本堂が池と同じ高さに建てられているのに対して、三重塔は一段高い位置に建っている。そのため、全体を俯瞰で観ることが出来、あの世を見渡せる演出となっている。近世の高層建築物である塔に登ることはできないが、ここを造営した貴族たちは現代でいうスカイツリーや東京タワーから望む眺望を楽しむのと同じだったに違いない。まさに浄土をテーマパーク化した寺院である。
さて、浄土式庭園の傑作だと思う浄瑠璃寺だが、辺鄙な場所にあるのが難点。行くのに半日はかかる。(造営された平安時代に比べると行きやすいと思うが)この庭園形式を楽しむみ、かつ巨大化した庭がある。東京の六義園だ。国宝好きには東洋文庫の近くで共通チケットも発売されている、あの庭園である。もちろん、本堂や三重塔、九体阿弥陀坐像はないが、真ん中に池があり、入り口近くが水面と同じ高さ、奥の対岸は小高くなっている点が似ており、浄瑠璃寺に比べてかなり広く造られている。都内の一等地で浄土式庭園が味わえる素晴らしい場所である。