国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

三十六家集 本願寺

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室町から明治にかけて巻物も褒美のひとつとなり、名品たちが断簡にされて名門家の家宝に仕立て上げられた。書のなかには手鏡としてそれらを収集して一冊の本に仕上げたものもある。ただ、多くは切断された単品を茶室サイズ(床の間に飾る)に合わせ、掛け軸にしている。茶室という狭い空間で印象を残すためには、随所に目利きたちを唸らせる演出が必要で、掛け軸はその中でも高級感を出す分かりやすいアイテムとなる。

佐竹家から流出した三十六歌仙絵巻が断簡された。この時期は、第一次世界大戦後の不況時期であった。巻物状態では相当な金額になるので買い手が見つけにくかった。そこで財界での茶道ムーブメントもあり、掛け軸することで購入者が容易に見つかった。また、財界人たちの手が届く(といっても相当な金額)範囲まで販売価格を下げることができた。その一方で断簡されて以降、36歌仙(+1)たちはすべてが揃うことはなく、一部では行方不明扱いになっていたものさえあった。今回、同展示では31作品が集結。流浪の果てに京都で集結した奇跡の展示。次回は果たしてあるのだろうか。

さて、そんな奇跡を記念して、本願寺から国宝・三十六家集が出品。絵は描かれていないが、三十六歌を色とりどりの紙を継ぎ接ぎして綺麗に仕上げた台紙に書いている。その台紙の色継ぎ方法がみごとで、こんな紙があれば欲しいと一瞬で思えるぐらい芸術性が高い。そこに、歌が流れるように書いていて、台紙の芸術性を邪魔しないみごとな配置となっている。紙が貴重な時代に、嗜好を凝らして歌を読むだけの簡素なものではない、創造性を広げる最高の演出がなされた本となっている。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。