2024年秋の東博の特別展はずばり「はにわ」。東博150年展でもはにわの周りには人の波が途切れることがなかった。古墳ブームとともに、はにわブームを予感させる特別展の展示内容に新たな国宝が加わるかもしれない。
松阪市が所蔵する三重県宝塚一号墳出土埴輪が国宝指定を受ける。
宝塚一号墳の出土品は設置された当時のままの状態で出土したものが多いのが特徴。中でも、大型で威儀具を立て並べた船形埴輪は古代の船の造形がほぼ完全体で残る。文字が普及していない時代の風俗が立体的に分かる貴重な資料である。
3月15日、文化審議会が6件の美術工芸品を国宝に登録することを文部科学大臣に答申した。
官報に告示されて初めて指定となる。その6件を見ていきたい。(また、観たい国宝が増える)
まずはタイムリーな文化財。金峯山寺や金峯神社で見つかった金峯山経塚出土紺紙金字経は藤原道長・師通自筆の経典である。NHK歴史大河ドラマの光の君への中で描かれるかもしれない文化財である。
すでに大和国金峯山経塚出土品が国宝に指定されていることを勘案すると順当な国宝指定である。金峯山経塚出土紺紙金字経だが、過去のいきさつから同じ名称で2件の国宝となっている。1件目は重要文化財として考古資料に分類されていたものを書跡・典籍の部に移管した上で、国宝指定したもの(金峯神社所蔵)。2件目は近年になって見つかり、重要文化財の指定を受けたもの(金峯山寺所蔵)となっている。
いまは紡ぐプロジェクト2024年度修理助成対象となっている。2026年度にも修理を終えて公開できるとのことで、2年後が待ち遠しい。
京都のイメージは平安時代の雅な雰囲気で、京博の展示でも煌びやかなものの展示がよくある。今回も円山応挙の企画展示があり、目の保養になった。東博で開催されたやまと絵の豪華さをぜひ京博視点で企画してほしい。
さて、国宝は備前・備中・備後の名刀の企画で出品が1点あった。吉備地方の刀剣を集めて展示していたが、その多くが鎌倉時代に作られた太刀であった。文化庁所蔵(保管は京博)の正恒は太刀で長さ約75センチメートルと長尺であることに加え、鍛えと刃文が正恒の典型ということで国宝の指定を受けている。太刀は長さがある分、扱いにくいため摺り上げて短くされたものをよく見る。この企画展でも何点かあったが概ね太刀としてそのまま受け継いだものが多かった。個人的には短刀の愛らしさが好きなのだが、鎌倉時代の益荒男が身に着けたものを揃って見るのも悪くなかった。
京博では新春の企画展の後半戦が始まっていた。毎年恒例となりつつある雛人形の展示は旧家からの寄贈品が並ぶ雅な空間となっている。
3階で開催されている平安時代人の祈り―経塚と経筒―では展示替えが行われ、新たな国宝が展示されていた。金銅藤原道長経筒はNHK大河ドラマ・光の君への中心人物である。その藤原道長が金峯神社へ納めた経筒を展示していた。御堂関白日記に見る筆まめ男・道長が栄華を極める足掛かりを感謝するため納経した。その経典を納めた筒が見つかり、日記と一致したことから貴重な文化財として国宝となった。NHKでもこの国宝が小道具として再現されるかもしれないので、しっかりと目に焼き付けてドラマ鑑賞を楽しむ。