国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

蔦蒔絵唐櫃 厳島神社

本阿弥光悦の大宇宙と題して展示会だが、光悦という特異点は本阿弥家の下地(鑑定士としての基礎に加えて教養やネットワーク)があって形成できたことが分かる。この特異点で類稀なるプロデュース力を活かして形に変えることが出来たのが天才なのだろう。

天才がマネージメントしたネットワークにはもうひとりの天才である俵屋宗達がいたり、焼き物の楽家(今回は展示されていないがサンリツ服部美術館所蔵の国宝である白楽茶碗・銘「不二山」がある)とのつながりなどがある。

鶴下絵三十六歌仙和歌巻は同展示会でも人気を集めていたひとつで、すべてを開いた状態で展示していた。鶴が舞う姿をコマ送りのように描いたのが宗達で、その下絵の上に光悦が三十六歌仙の和歌を筆で書いて仕上げた。鶴に使われている銀が反射する位置で見るときらきらと本当に舞っているように見える。銀はどうしても時間が経つと黒ずむのが難点だが、それでも保管状態の良さから部分的ではあるが未だに煌めく。このコラボ作は重要文化財で、国宝としては厳島神社の蔦蒔絵唐櫃が宗達関連で出品されていた。同氏によって作られた最も早期の作品と推定されている。宗達の腕前を知った光悦が共演を持ちかけたのか、宗達からの売り込みかは分からないが、天才の夢の共作は大宇宙的な作品であることは間違いない。

光悦は本阿弥家のこれまでの鑑定や研磨の枠で収まっておらず、広い芸術の世界で新しい試みを実現した。のちに琳派の祖となる俵屋宗達を同時代にいち早く見出したことは鑑定眼が正しい証拠である。鑑定眼を活かして作品に落とし込めることこそ、本阿弥光悦の真骨頂だ。光悦が関わったものだけピックアップして観ると、斬新だが決して美から逸脱していないので、しっくりくる出来栄えとなっている。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。