元興寺の本堂の裏に続く形で禅室が建っている。公開されておらず、本堂に比べてひっそりしている。もとは僧坊でここで僧侶たちが寝起きしていた。若き日の空海が大志を抱いて奈良で勉学に励んでいた場所とされ、首都が平安京へ遷った後、紆余曲折の末に真言律宗の西大寺に所属することになった。空海がもたらした縁である。
この建物の部材には飛鳥時代の古材を多く再利用している。もともと元興寺の起源が明日香時代にあった飛鳥寺で、新しい首都である平城京へ移した際にその部材を転用した。その後、幾度かの改修工事でも部材を再利用し続け、いまに至っている。奈良時代以前の部材が残っていることは歴史的価値がある。
派手な建物や事物がないため、インバウンドの観光客などが大挙して来ていない。静かにゆっくり奈良を感じるにはよい場所である。