国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

毛詩正義 杏雨書屋

大阪のど真ん中、北浜と船場の間にある道修町は薬に関わる企業の集積地となっている。塩野義製薬や小野薬品など昔ながらに本社を置いている企業もあれば、田辺三菱製薬大日本住友製薬など合併によって社名は変われど、道修町発祥の流れから社屋を置く企業もある。道修町発祥の薬品会社として(医薬品業界を通じても)最も売り上げが大きい会社が武田薬品工業である。

この武田薬品工業が財団を通じて運用しているのが杏雨書屋である。医薬品開発につなげるため様々な書籍を集めており、収集保存活用を目的している。その収集書籍の中に国宝3件と重要文化財が10件以上ある。医薬品企業が国宝を所有しているのは唯一となる。この国宝だがあまり展示される機会がない。杏雨書屋は毎年、特別展示を春と秋に開催しているが、ほとんど国宝のお披露目はない(複製はあったような記憶がある)。かといって、貸し出しもあまり見たことがない。見ることが難しい国宝となっている。

今年の秋の特別展示会はずばり、杏雨書屋の国宝・重要文化財(杏雨書屋の善本漢籍―恭仁山荘本を中心に―が本題)である。コロナが五類へ移行したこともあり、満を持して特別展開催となった。

杏雨書屋の見るのに不便なのが土日祝日が休館する点だ。とはいえ、平日は見に行けない人に配慮して、10/28(土)、29(日)、11/23(祝)が開館するとのことで、早速、初日の28日に見に行った。行って知ったのだが建築ミュージアムフェスティバル大阪の開催に合わせての開館で、大阪の古い建物を広く知って見てもらう街歩き企画となっている。杏雨書屋の入る建物もレンガ造りで堅牢なイメージを作り上げている。中は改装されて近代的な展示施設となっている。

入り口からすぐ右に曲がり、展示会場が左右に分かれる。左の常設展ではコロナ禍もあったため、昔の流行り病について展示していた。右の特別展では書跡がずらりと並ぶ。国宝で最初の展示は毛詩正義。詩経の注釈本で、紹興九年刊とあり1139年の南宋時代の印刷物である。金沢文庫の蔵書印があることから鎌倉から流出したものである。杏雨書屋は17冊を保有している。気になった部分として一番大きな朱印が雑な押し方だった。文字部分が潰れて一体化し、なにを表しているか分からなくなっていた。記帳の書籍へ印を押すのならせめて綺麗に押してほしい。

 

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。