京都の東北部、修学院離宮近くにある曼殊院で国宝秘仏の黄不動明王の特別公開が行われていた。曼殊院の悲願であった宸殿が150年ぶりに再建復興された記念での公開である。
曼殊院は京都でも外れにあることから、外国人観光客で賑わう中心部と違って休日でも穏やかな時間が流れている。叡山鉄道の修学院駅から山の方へ歩くこと十数分。武田薬品工業の薬用植物園を超えた所にある。
特別公開として拝観料千円となっていたが、他が値上がりしていることと、日本庭園でゆっくり見ることが出来る環境を考えるともっと取ってもよい。寺の内部は約1年前に訪れており、見覚えがあるものばかり。最終盤の大書院の前まではこれまで通りで、唐門が見えていた場所に宸殿が新たに建てられていた。新しいため木の香りが立ち込める中、黄不動が模写と共に掛けられていた。普段は京博へ寄託しているため、曼殊院で見るのは初めて。博物館と違って明るめの照明だったこともあり、よく見ることができた。国宝の黄不動と模写はかなり似ていたが、アフロヘア(螺髪)のボリューム感が国宝の方が少なく、岩場の足元の描き方は国宝の方が力強さを感じた。
国宝でも秘仏となっている園城寺不動明王像(通称:黄不動)や、青蓮院青不動明王二童子像はなかなか公開されることはない。今回の公開で曼殊院の黄不動明王像も秘仏扱いとなり、次にいつ会えるか分からない。その間、曼殊院では模写の黄不動が新しくできた宸殿に祀られることになる。文化財保護としては当然なのだろうが少し寂しさがある。