平成館のレストラン側の出入り口から庭園へ抜けると石垣があった。平成館がゆるやかな斜面に建っていることは七条駅から正面玄関までの道中で何度も足で体感していたが、目に見える形では斜面を石垣で補正して建てられていることを初めて知った。これはこの場所に建っていた方広寺の石塁のようだ。写真では見えないが、石塁の上には水を張って博物館が水上にあるような演出があり、それに気を捕られていてこれまで全く気づかなかった。
日中書の名品で、このタイミングで空海筆の書が出ている。今年は真言宗立教開宗1200年で、弘法大師生誕1250年の記念イヤーである。京博所有の金剛般若経開題残巻は香川県立ミュージアムで開催された展示会には前期に出品されていたので見れず仕舞いだった。今回の展示は所蔵館の京博なので、今年の展示はこれが最後と思い見ておきたかった。
弘法大師こと空海は三筆(嵯峨天皇、橘逸勢)に上げられる筆の名手とされる。しかし、奈良博も所蔵している金剛般若経開題残巻(香川県立ミュージアムで見る)をもう一度見てもうまさがピンと来ない。聾瞽指帰でもそう感じたが、個性的な文字を書く印象である。もちろん公的に近い三十帖冊子の書きぶりに比べると少し荒々しい字ずらであり、試行錯誤の段階での書であるのだろう。京博所蔵の物では墨の濃淡も際立つ書となっており、この点もうまさを感じさせない部分になっている。空海の人間味のある部分が見て取れる書は記念の年に見ることができ、大満足だった。