おん祭り展は展示総数45件とこじんまりとした陳列のため東新館で完結した。西新館では新たに修理された文化財がお披露目されていた。昨年から続く修理された文化財の公開展ムーブメントは一つのカテゴリーになりつつある。
公共事業予算が年々先細る中で、文化財修理に対する予算も厳しさを増している。一方で、企業の文化貢献(メセナ)の一環として修理、保善活動費の拠出がぼつぼつと出てきている。その文化貢献を見える化(PR)したい企業側の思いと、滅多に貸し出されない文化財公開を含む修理後の初々しいお宝を公開したい博物館側の思いが重なったことから企画が成立するようのなった。修理には年単位の時間がかかるので、頻繁に企画できるものではない。ただ、民間の善意に頼らないと修理もままならない時代だから成立している企画なので複雑な思いである。
西新館最初の入り口から一番見える場所に倶舎曼荼羅が展示されている。修理を終えたにも関わらず一見すると傷んでいる仏画としか判別できなかった。修理前はどれほど傷んでいたか想像できない。文化財修理展の中には修理前の写真を掲示して比較・解説しているものもあった。すべてを解説すると手間なので、メインどころだけでも修理前の写真がほしかった。
さて、倶舎曼荼羅は釈迦三尊像を中心に、玄奘によって訳された倶舎宗の祖師8人衆が囲んだ絵。後方に梵天と帝釈天が控え、四隅を四天王が護る鉄壁の布陣を執っている。曼荼羅図は使い込まれているためか、色あせ度合が経年劣化の域を超えているが、大事に使われていたためか色が全く分からないまでにはなっていない。おそらく法要などの重要な場面のみでの使用だったのだろう。東大寺の法華堂の仏像たちにも彩色が残っているように、扱いに慣れた従事者たちが管理すれば1000年以上経っても残ることを証明している。