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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

三十帖冊子 仁和寺

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文化財の修理・修繕事業は地味な作業の割に費用がかかるが、文化財保護には欠かせない事業である。最近になって、修理を終えた文化財を一挙公開する展示会が増えてきている。展示に耐えるまでに回復できたことと、展示することで少しでも修繕費の足しに出来ればという思い、なにより保護活動の認知度を上げて多くの寄付者を募りたいと考えているから展示会が増えているのだろう。

ただ、観覧者にとっては滅多に見ることができない貴重な文化財が展示していることが会場へと足を運ばせる原動力となる。今回の京博での文化財修理の最前線展も滅多に見ることができないものが数多く展示されていた。

仁和寺の寺宝で、空海が唐から持ち帰った三十帖冊子は先般、東博仁和寺展で修繕後の全巻一挙初公開があった。そして、今年は仁和寺の霊宝館でも秋季特別展の目玉展示物として公開されていた。

修行を終えて帰国する空海は、唐から密教知識を持ち帰るべく、この三十帖に詰め込んだ。スペースが限られる船内において、すべての情報を持ち帰るため小さな字でびっしりと書いている。日本の微細化技術が原点を見るようで、読みやすい字となっている。

仁和寺の寺宝で、空海が持ち帰った密教奥義は当時から国の宝なので大切に扱われてきた。だが、1200年近い前に作られたものなので経年劣化を避けられず修繕することとなった。神聖にして不可侵の密教の奥義書だと修繕も宗教的理由から叶わぬ夢だったかもしれないが、未来永劫受け継ぐための文化財となることで修理が行え、展示会で公開され、人々の目に触れることが可能となった。仁和寺では観音堂も改修工事を経て公開されるなど、文化財修理を通じて開かれたお寺となっている。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。