桃山100年があったからこそ誕生した系譜に琳派がある。俵屋宗達の風神雷神図屏風や尾形光琳の紅白梅図屏風、酒井抱一の秋草鶉図、鈴木其一の夏秋渓流図屏風など、現実と非現実の狭間を行く構図に金箔をここぞとばかりに使用して煌びやさを演出し、支援しているパトロンを喜ばせる技法は桃山時代の御用絵師そのものとなっている。
その中でも琳派の代表格である尾形光琳は絵画にとどまらず立体造形物も手掛けている。写実的な絵画を入れ込んだ立体物は多くあるが、デフォルメされたデザインなのに優美さが残る光琳の硯箱は国宝にも関わらず手に取って使ってみたくなる衝動にかられる。高貴なだけでお高く留まるのではなく、使用者(パトロン)の気持ちに寄り添った作品なのかもしれない。