第3室は入り口から見て左の部屋。金銀かがやく琳派の美と題した部屋となっていた。ここは少し広く、大きめの作品を陳列していた。尾形光琳・乾山兄弟の作品を初め、酒井抱一、鈴木其一、原羊遊斎が並び、本阿弥光悦の草木摺絵新古今集和歌巻が通期で展示されていた。
そこで欠かせないのが琳派の祖、俵屋宗達。もちろん、国宝の源氏物語関屋澪標図屛風を展示していた。14帖の澪標と16帖の関屋の一場面を描いたもので、それぞれ鍵となるシーンが屏風全体で表現されている。源氏物語絵巻だと、文字情報の横に起こったことを網羅するように場面を描き込んで、情報量たっぷりな仕上がりになっている。しかし、俵屋宗達はあえて屏風の大きさいっぱいに一つのシーンのみを描くことで、その場に俯瞰的にではあるがいるような描き方をしていた。これこそ、江戸時代のメタバースだと思う。
この屏風は2つの場面だけとなっているが、関屋と澪標だけではもったいない。とはいえ俵屋宗達に今更制作をお願いする訳にはいかない。AIなどを用いたプロジェクトで、もし宗達が追加の場面を描いたらというものがあれば、それだけでも展示会が成立しそうだ。