国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

一遍聖絵

時宗を起した一遍上人の七百年遠忌記念の展覧会が京都国立博物館で開催している。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/special/index.html

宗教家の遠忌にちなんだ展覧会はこれまでも数多く開かれている。というよりも遠忌に合せて企画が進んでいるので、この時期にしか見ることができない貴重な寺宝や陳列の仕方が楽しめる。

今回の見どころは国宝の一遍聖絵の全12巻がこの会期中にすべて展示される。7巻だけが東博の所有で、そのほかは清浄光寺所有。簡単に実現しそうな組み合わせだが、絵巻物が長尺なので展示スペースのある大きな博物館でしか全部見せますができない。なので、今回の一挙公開を見逃すとそのチャンスはそうそう訪れないだろう。

【一遍展】

レア ★☆☆

観たい ★☆☆

コラボ ★★★

類聚古集

元号制定による万葉集ブームの流れに乗ってほしい国宝がある。

龍谷大学が所蔵している類聚古集だ。万葉集長歌・短歌・旋頭歌に分け、題材により分類・配列した解説で、写本として唯一現存しているものである。伏見天皇の宸筆とされる花押もあり、国宝にふさわしい。

さて、同書の現物はなかなかお目にかかれない国宝なのだが、デジタルによる画像データベース化されているので見ることは可能だ。しかし、本物が観たい。そのチャンスが今年の夏の龍谷大学380周年の記念展示会かもしれない。大学所蔵品は節目での陳列がままある。デジタル化を終えて、新元号となるので展示会への出品のタイミングとしては申し分ない。万葉集関連として展示情報をチェックしたい。

万葉集

元号が発表され、その元ネタが万葉集から採用された。万葉集の中で国宝指定のものは3つ存在する。

もっとも完品に近いのが東博所有の元暦校本20冊。そして、残巻ではあるが京博の巻第九残巻(藍紙本)、前田育徳会所有の第三、第六巻残巻(金沢万葉)の3つが国宝に指定されている。いずれも常設では展示されていないものの、企画展などでお目見えするレアな国宝。

国宝ではないものの、断簡されて各所で保管されている桂本と天治本の計5つを「五大万葉集」と呼ぶ。いずれも平安期のものだ。

国宝の3つは展示の都合などがあるが、旬なうちに展示しそうだ。東博なら20冊のうち、出典の書のみを展示しそう。また京博のものは夏に横浜美術館で展示予定。前田育徳会のものは石川県立美術館に展示するだろうが、開館60周年記念展あたりでの展示かもしれない。そのほかで、国宝ではない断簡の部類はゴールデンウィークの緊急特別企画で各地の所蔵者たちがこぞって展示するだろう。ネットでの最新の情報収取が欠かせない1か月間になる。

【龍光院展】密庵咸傑墨蹟

密庵咸傑は宋の時代の禅僧。その墨跡で唯一現存しているものが龍光院所有のモノである。密庵咸傑の系譜から著名な墨跡の著者が数多く誕生していて、虚堂智愚、蘭渓道隆、無準師範、無学祖元、清拙正澄、日本の宗峰妙超・一休宗純夢窓疎石、雪村友梅など枚挙の暇がない。

墨跡界のレジェンドであることに加えて、千利休の添状もあることが箔をつけている。茶会の床の間に飾る最高の品である。国宝の龍光院の書院ないには茶室「密庵」があり、この墨跡を飾るためだけの密庵床が存在する。そのくらい貴重な重要なものとして扱われている。

展示会では他の展示物同様に飾られていることと、曜変天目が見た目からして注目を集めるので、墨跡の貴重性が分かりにくい。また、MIHOミュージアムの展示には解説が無いに等しく、事前予習なしに行くと見落としてしまう。この機会を逃すといつ展示されるか分からない逸品として見ておきたい。

【龍光院】曜変天目

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一昨年の国宝展では第2期の目玉であった龍光院所有の曜変天目茶碗がMIHOミュージアムで早くも再登場。行列必死の展示会へ行く。開始して2日間目、MIHOミュージアムは桜が絶景のためその前で、国宝展並みの来客はなかったが、それでも開場前に100名を超える人が来ていた。おそらく桜の時期は人混みと化すことだろう。

さて、曜変天目を国宝展で初めて見た時は特別な照明まで準備しての展示だった。

http://kokuhou.hatenablog.com/entry/2017/10/23/080000

今回は普通の照明で、真上からの照射型なので、器の中は明るく見やすかった。茶碗として小さい部類だが、器の中で青く光る輝きは小宇宙を想像させるだけの大きさを感じる演出となった。斑点は小さな円形が、それとなく規則性を有して位置しているためか、所々にある斑点群が肉球に見えてくる。

器自体が漆黒で、今回の照明は内面のみに焦点を当てているため、側面部分は真っ黒にしか見えない。巻物の巻き直しての展示があるのならば、器の照射直しがあっても面白いかもしれない。

列がそれほど長蛇になることがなかったので数回並んで見たが、器の中には茶筅による回転らしき傷があり、この器で茶を一服した人物がいる。現代人には展示会があり、見るだけなら経験できるが、使用するほぼ不可能なのだろう。緊張して落としでもしたら大変なことになる。

さて、曜変天目の国宝指定は3点あり、そのすべてが今年見ることができる。静嘉堂文庫美術館藤田美術館所有は奈良博で展示される。そして、もう一つの曜変天目とも言われる重要文化財でMIHOミュージアム所有の天目茶碗は、今回の展示会に合わせて常設展示会場にて公開されている。見ると国宝3点は光によって青く輝くのに対して、MIHOのものは虹色に光る。ある意味でMIHOの方が貴重なのかもしれないが、器が放つ輝きというよりか、茶器の釉による光の屈折が虹色へと変化させているように見える。曜変の怪しさが全くないので別物として、虹彩天目とめでたい命名をつけたいぐらいだ。2017年に続き、曜変天目イヤーの幕開けに相応しい展示会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木造聖徳太子・山背王・殖栗王・卒末呂王・恵慈法師坐像 5躯 法隆寺

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法隆寺駅

法隆寺は国宝建築物保有数ナンバー1、国宝指定の彫刻保有数もかなりの数である。(三十三間堂の千体や平等院の供養菩薩など体数だと見劣りするが)。境内は国宝だらけの寺院である。

国宝の彫刻はすべてが建物内で保管している。なので、入場して見なければならない。まあ、当たり前と言えばその通りである。しかし、普段は秘仏木造聖徳太子・山背王・殖栗王・卒末呂王・恵慈法師坐像 はお会式の3月22日から24日にしか公開されない。そして、ネット情報だと供物が像の前にうず高く積まれているのでほとんど見えない。

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そんな見ることが困難な像を間近で観る機会がある。お会式の前日に行われる逮夜法要が終わったのちに内陣まで入って間近で拝むことができる。

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逮夜法要は3月21日の午後6時から始まる。ちょうど春分の日なので日没もその頃で、始まる前は少し明るかったが終わる30分後には真っ暗になっていた。室内はローソクの灯による幻想的な雰囲気で、法隆寺の境内についても夜間公開を前提にしていないので街灯類も少ないため、暗がりの中での神秘的な儀式となっていた。

10分前についた時には50人を超える人がお堂の中ですわってまっており、法要が始まってからも来た人がいたので100名を若干下回る人出になっていた。法要は左右5名とメイン1名の11名で行われ、左の部屋内にリズムをとるための雅楽師が控えていた。お経が読み上げられ、途中に両サイドのお坊さんが散華を蒔いていた。これは持ち帰ってもいいようで、先頭で入って内陣見学した人が像を見るよりも先に拾っていた。なので、最初に来ていた人はそれが目当ての人だったのだろう。

法要が終わると、内陣に順序良く案内。100名近い人がいて、照明がローソクだけだった。おまけに床と畳に段差があってこけてもおかしくないため、なんども注意喚起していた。

さて、肝心の像だがネット情報ではライティングがされていないため非常に観えず辛いと書かれていた。しかし、今回は像が安置されている3か所それぞれに照明が焚かれていて非常に見えやすかった。時代の変化に寺院側も配慮していただいたのだろう。そして、国宝の聖徳太子像は、お札にもなった肖像画のか細さと違う非常に凛々しく男らしい像だった。顔の輪郭が四角張った造りで、高橋英樹ばりにデカく感じた。そのほかの4体はユーモア溢れるもので、いたずら好きのかわいらしい像だった。東大寺の良弁がリアル路線の像であるのに対して、亡くなって500年後の平安時代に造られた像だけに、漫画チックな面が全面にでている。ちょうど香雪美術館で鳥獣戯画の公開がはじまっているが、平和が続いた時期だったこともあり当時の流行だったのかもしれない。

梵鐘 延暦寺西寳幢院鐘

国宝の梵鐘はほとんどが寺社の所有である。現役のものもあれば、二代目に現役を譲り引退、陳列展示されているもの、特別に建屋が作られ保管されているものなど、様々な扱いがなされている。
国宝梵鐘にあって、異彩を放つのが佐川美術館か所有する梵鐘である。宗教的な意味合いでの梵鐘の扱いは皆無で、美術品として陳列される。なので、常設ではなく、テーマにあった展示があった時のみ展示がある。今回、平山郁男の仏教をテーマにした展示の一環で久し振りの展示があった。
ちょうど平山郁男の延暦寺の絵たちの中心に梵鐘が陳列されていた。のっぺりとした表面に、鐘を釣り上げる部分のみ意匠がある程度。しかし、鐘の中に来歴が書かれているため、国宝につながった。美術品として、それ程素晴らしさを感じないが、延暦寺の歴史が染み込んだ梵鐘と思うと感慨深い。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。